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第60回 「歯科用CT」で矯正治療が変わった!

「歯科用CT」の最高機種である日立製”CB MercuRay(12型)”が当クリニックに完備されて、約5ヶ月が経過しました。

歯科用CTが当クリニックに設置されてからというもの、あらゆる分野での診断の質が向上し、治療法が変わっていることを、日々実感しています。

矯正の分野に絞ってお話しますと、”CB Mercuray(12型)”は19㎝径の撮影をわずか10秒で可能ですので、頭頂部付近までしっかりと撮れます。「歯科用CT」の中で、これほど広範囲に撮影できる機種はほとんど存在しません。

しかし、頭蓋部を基準にする矯正治療においては、どうしても、必要な撮影エリアなのです。従来からの2次元のパノラマやセファロ(側貌、正面X線写真)の、何倍もの情報量、解像度があり、わからなかったことの多くが治療前に確認できることから、例えて言うと、「痒いところに手が届く」といった印象です。

今までの診査・診断を根底から覆す多くの3次元の情報が手に入りますので、プランニング(治療計画)の強力な指針、武器となっています。

従来から矯正治療の診断のための資料といえば、「歯の模型」、「顔貌・口腔内写真」に加え、唯一とも言うべき上下顎骨の形態、頭蓋との位置関係を把握するために「セファロ(側貌X線写真)」が利用されてきました。

「歯並び」の問題を非常に大雑把に言いますと、”歯牙の位置や形態の問題””顎骨の問題”に大別されます。2つの要素が絡み合って歯列不正を起こしています。

歯牙の問題については、歯型を採って模型にして、いろいろな角度から観察すればおおよそ判明します。歯の問題は3次元の世界での観察がある程度可能です。

ところが、顎骨については、3次元(縦、横、高さ)の世界に存在する頭蓋、顎骨をセファロという2次元(平面)で表現し、診断資料として利用していました。当然限界があります。左右の多くの構造物が重なって写り、基準点ですら読影不可能な場合にたびたび直面します。

CT像ですと、3次元画像はもとより、片側をカットして側方から片側だけのセファロ像を観察することができます。右側と左側を別々に側方から読影できます。また、顎骨各部位の唇舌側な詳細な形態、皮質骨、海面骨の厚み、骨質などが事前に十分把握できることは、拡大が基本の「非抜歯治療」の限界、許容範囲なども術前に十分認識することが可能となります。
歯肉退縮や歯根吸収を起こしえる方向への歯牙移動がどの方向か?移動量の限界は?などが治療前にわかることは、プラニングを行う上での朗報といえます。

当クリニックでは、まだ100名足らずの方ですが矯正のCT診断をするようになり、非常に多くの情報が術前に得られるようになりました。正確な頭蓋、顎骨、歯牙の位置関係が判明すれば、当然治療計画にも反映できます。

また、顎関節部の情報も、左右別々の3D、セクション像として非常に鮮明に得られますので、顎偏位(下顎位)の状況、頭蓋と下顎頭との相関関係もロジックに分析できるようになりました。

その辺りについて、CT診断が如何に治療計画の立案に有効か!わかりやすく触りの部分についてお話してみたいと思います。

一つ目のケースは、受け口(反対咬合)を主訴に来院された方です。抜歯か非抜歯どちらの治療法が良策か?の判断にCT像は非常に有益な情報提供をしてくれます。

図AはCT画像を再構築して作製された3D画像の正面観です。これだけのボリュームを、0.4㎜ピッチでわずか10秒で撮影可能です。もちろん上下左右に360°自由に回転させながら、瞬時に画像変換されていきます。

各種基準点間の距離の計測を0.1㎜単位で実測できるとともに、各種基準平面に対する角度の計測ももちろん可能です。

そして、図B図Cのように、任意の位置でスライスし、半側をカットし、断面像を観察することができます。曲線やブロックでのカットも可能で、3方向からのセクション像で詳細な読影ができます。

図Dが左側の側貌像で、図Eが右側の側貌像です。左右が全く対称型の人など存在しません。左右別々に評価することが可能となります。

図Fは、図Dの左側半側の上下顎骨前方部だけを拡大したところです。スライス面を変えることにより、各部位での上下顎骨の厚み、形状や皮質骨と海面骨の量などが克明に認識でき、歯根との位置関係を数値化できます。

各基準点も、非常に明瞭にプロットできますので、信頼性の高い側貌データとして評価できることは言うまでもありません。また、上下顎骨の骨質の良いところ、悪いところをエリアごとに分類することにより、移動量が大きくても大丈夫な歯牙とそうでない歯牙の判別もできます。

図Gは、下方からのあるセクションでの断面像です。任意の位置での下顎骨体部の幅、最前方部との距離、各歯牙の根尖と骨内での位置関係などから、骨内を動かしたい歯牙の移動方向、移動量の限界などを術前に知ることができます。

また、顎関節部と各歯牙との位置関係、距離などから、顎偏位の原因、そして改善させるための方向性を示唆してくれます。

図Hにおいては、上顎の各歯牙の根尖部と上顎骨内部での位置関係がアキシャル像で写し出されています。非抜歯治療で可能かどうか問題となる側方拡大の限界や、前方部での歯牙と骨体部との前後的位置関係、移動量の目安も詳細に観察できます。

図Iは口元の横からの拡大像です。受け口の方でしたので、下唇、頤が前方へ出ており、上下唇と歯牙との関係、前歯群と上下顎骨との位置関係、骨の厚み、根尖と皮質骨との距離なども、左右別々に任意の位置で鮮明に把握することが可能となります。

そして、図Iの下顎前歯部を拡大したのが、図Jです。下顎前歯の後方移動量の限界(皮質骨にあたるまで)を、治療前に正確に認識できることは、非抜歯での治療が可能かどうかの大きな指標になります。

何度も言いますが、2次元の画像では、多くの構造物が重なって写るため、基準点を始め、読影したい情報が不確実となってしまいます。不確実な診査からは、正確な質の高い診断、治療計画は難しいといえます。

このケースからおわかりのように、上下顎骨と各歯牙との相関関係が、3次元的にしっかりとデータ収集できることは、治療方針、治療計画を決定する上では、必要不可欠と考えます。治療中、治療後の客観的評価にも非常に有用に活用できます。

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

次のケースは、非常に特異なケースです。
永久歯は、親知らずを除くと通常28本存在します。が下記の方(16才)は、先天性欠如歯が14本存在します。言い換えれば、14本しか永久歯が存在しません。

診査・診断の上、どのような治療プランを立案できるのか?矯正分野の知識だけでは全く対応しきれないケースと言えるのではないでしょうか?

図Kが初診時のパノラマ像(2次元)です。正常な歯牙本数の半分しかないため、上下歯列弓のさまざまな場所に余ったスペースが存在しています。

16才という年齢と、顎骨に歯胚(歯の基になる形状物)が見当たらないことから、今後新たな永久歯が育って、生えてくる可能性はありません。何本か残っている乳歯も、問題点を多く秘めたものばかりで、長年使用することは不可能な状態でした。

今回は触れませんが、4年越しの治療プランを立案し、提示させて頂きました。

上下顎骨の成長がほぼ完了したこの時期に、どのような処置を行い、今後の治療計画はどうするのか?即答するには不確定要素が多すぎる、難問にぶち当たった苦悩する症例といえます。
たくさんの情報がほしい!、というのが正直な感想でした。

K

図L~図Qが初診時の口腔内の状況です。図Lは正面観です。正中離開(ど真ん中のすき間)の他に、乳歯の晩期残存が多数認められます。思春期ということも考慮し、上下前歯部の審美的な問題を早急に解決してあげなければいけないと感じました。

図Mは横からのアップです。過蓋咬合(咬み合わせが深い)状態です。

図N(上顎咬合面観)、図O(下顎咬合面観)のように、随所に欠損部が存在し、乳歯の残根も多く見られます。当然臼歯部(奥歯)で咬める場所は、ほとんどありません。毎日、食物を丸呑み状態にするしかありません。

図P(右側側面観)、図Q(左側側面観)です。臼歯部のバーティカル・ストップ(垂直的な位置づけ)がないため、咬み合わせが低くなり、前歯群は、全て過蓋咬合の様相を呈しています。

このページの最初にお話しましたように、矯正治療は、歯列不正の問題点である”歯牙”と”顎骨”の相対関係や位置、大きさ、形態について、できるだけ詳細に把握することが出発点です。

図Rが、矯正治療を掲げている歯科医院ならどこでも利用している側貌レントゲン(通称{側方セファロ})像です。大まかな情報(スクリーニング)を入手するには利用できますが、上下顎骨の詳細な形状や形態、各歯牙との位置関係を、大まかには判読できます。いろいろな解剖学的構造物が、左右重なって写ってしまいます。

図Sが同じ患者さんを当医院に設置されている「歯科用CT」で撮影した3D像と、3方向からの各セクション像です。

19㎝径という広範囲撮影ができることにより、矯正治療の診断機器としての性能を如何なく発揮してくれます。基準点、計測点を鮮明に判読できます。

3D像から各基準点をプロットし、角度、距離等を前ケースのように半側ずつ別々に行うことも可能ですし、任意のスライス面で、歯牙と歯槽骨、顎骨との位置関係を詳細にデータ収集できます。

また、図Tが正面観で、下方から見上げたのが図Uです。一方、図Vは、直線的に横方向にスプリットし、図Wがその断面を下から見上げたところです。連続スライス面として捉えることにより、各歯牙の歯根が歯槽骨、顎骨内のどの位置に分布しているのか数値化していきます。

また、図Xのように任意の位置で、自由に曲線的にカットし、図&のように下方から観察することもできます。上顎骨と下顎骨の左右的(頬舌的)な位置を観察できることにより、側方拡大の目標値、限界値の特定が可能になってきます。

図Yは,下方からアキシャル(横方向)でカットし、下顎骨の形状形態はもちろんのこと、歯根との位置関係を計測し、骨量が不足している場所へのインプラント埋入が可能かどうかや、先天性欠損部へのインプラント埋入に必要な骨造成の必要量を計測しているところです。

矯正、補綴、外科の知識を総動員して、診査・診断していきます。その後、可能なプランニングを模索していきます。

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”矯正治療の診断に、CT診査は不必要だ!”と考えている歯科医がまだまだ多いのが現状です。とても悲しい事と考えます。

なぜなら、非常に多くの情報を提供してくれることは確固とした事実としてありますので、質の高い診断ができることは間違いないからです。

見えなかったものが見える!ことは、本当に多くの発見があります。
最近では、当医院設置のCTに関する矯正専門医の方からの問い合わせも増えてきました。診断、治療計画の質を上げるためには非常に有効であることはご利用頂ければ、すぐお気づき頂けます。是非利用して頂きたいものです。

診断力が上がることは、治療の質が上がることにつながり、自身のスキルアップにつながり、如いては患者さんへ貢献できます。

矯正分野に関して言えば、当クリニックでは、「歯科用CT」をきっかけに、歯科という分野を超えた医科の方々(耳鼻咽喉科、美容整形外科)との新しい取り組みを進めています。公的病院との共同研究のためのデータ収集も始まります。

来月には、多くの矯正専門医、指導医の方々の前でのケース・プレゼン、講演を行います。CTの有効性についても触れるつもりです。他分野とのコンビネーション治療を中心に、総合歯科医だからこそできる矯正治療について触れるつもりです。もちろん質の高い矯正治療を行うという前提があってのことです。

広範囲撮影が可能な「歯科用CT”MercuRay(12型)”」の当クリニックでの活用法は、まだまだ始まったばかりです。今後、内部的、外部的に、どのように展開していくのか、私自身非常に楽しみにしています。益々目が離せない診断機器となることは間違いありません。

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