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第32回 かかりつけ医が行うべき症例(異所萌出した歯)・・・②

今回は、前回に引き続き、”ホームドクターが取り組んだほうが良好な結果が得られるのではないか!”と思われるケースで話を進めて見たいと思います。

 一般臨床医が日々行っている補綴(被せ)治療や外科(小手術)処置を併用しながらの矯正治療は、非常に好結果を生みます。

 全ての歯列不正に対して、歯の移動だけで治療しようとすると、治療法が限定されるため、無駄な治療期間がかかったり、結果が思わしくない場合があります。

 多方面からのアプローチを模索して、最善、最良の方法を提示できるよう日々スキルを高める、という姿勢がかかりつけ医には必要ではないかと考えます。

症例

半年ほど前に、図Aの状態の患者さんが来院されました。

 30歳の男性、”上顎前歯部の審美障害”が主訴です。

この患者さんに対して、どのような治療計画を提案できるでしょうか?

スキルのある歯科医なら、いろいろな治療計画が立案できます。

ということは、絶対的方法なないともいえます。各治療法に、長所、短所がありますので、患者さんに十分説明した上で治療を開始する必要があります。

図Bは、上顎の歯列を下から見た所です。黄色丸の場所にあった左側中切歯が前医にてすでに抜歯されていました。

 上顎は、重度の叢生で、図Cのように、黄色丸の左側犬歯が、中切歯があるべき場所の上の方(低位にあるという)に生えています。

 この歯をどう処置するかは、意見の分かれるところです。

もし、抜歯して、補綴物(被せ)で対応すると、抜歯した部位の歯槽骨は吸収するため、図Dの黄色のラインのように歯頚部(歯と歯茎の境のライン)が不揃いになって、審美的には良好な結果は得られません。

A

B

C

D

歯の移動による”矯正治療”と”補綴治療”を組み合わせることにより、提案できる治療法のバリエーションが増えます。

 今回のケースの場合、患者さんに提案させていただいた治療法を具体的に列挙しますと、
  ①歯の移動による矯正にて上下叢生を改善する。
  ②歯の移動は行わず、補綴治療のみでの修復を行う。
  ③矯正治療と補綴治療を組み合わせた治療計画を立てる。

①については、上顎左側中切歯がすでに抜歯されているため、左右の歯の数を合わすために、右側の小臼歯の抜歯が必要です。

また、奥歯の咬合関係をⅠ級にする(詳細は、歯並びのページの第16回 「理想的な歯並びとは!」・・・奥歯編 をご覧ください)ためには、下顎の歯の2本抜歯も必要です。全顎的な治療になることと、最終的には、低位にある犬歯を見かけ上中切歯の形態にするために補綴的な処置が必要です。治療期間は、約2年程度かかるでしょう。治療中の上顎前歯部は、審美的に非常に不良ですが我慢して頂くしかありません。

 上記の②については、歯を切削し、被せにすることにより、見かけ上の歯列不正を是正できます。治療期間は1ヶ月前後あれば可能ですが、一番の問題は歯頚部のラインです。

 図Dのように不揃いなままで、審美的には疑問符があると言えます。特に低位にある犬歯の被せは縦長の歯になり左右対称とはいきません。抜歯した後、GBR(骨の造成)を行えば、歯頚部ラインはかなり改善できますが、治療期間が半年以上は確実にかかります。

 ③については、低位にある犬歯を下方へ降ろしてくるとともに、上下前歯部のみの矯正治療を行い歯頚部ラインを揃え、個々の歯牙の形態については、補綴的に改善する、という手法により比較的短期間(6ヶ月以内)での治療が可能になります。そして、一番の利点は、矯正装置を工夫することにより、早期に仮歯を作製し、調整しながら治療を進めれるので、治療中の前歯部分の審美回復が応急的ではありますが、ある程度確保できるという点です。

 上記①~③について説明しつつ、患者さんの要望に主眼をおいて治療法を決定しました。患者さんは、全顎的な矯正治療は希望していないが、仕事上、仮のものでいいから、早急に前歯にそこそこ歯があるようにしてほしい、また、治療期間が年単位でかかるのも勘弁して欲しいということでした。

図Eは、治療法決定後、即日行った処置です。

上記の③つまり”矯正”と”補綴”の併用治療としました。低位にある犬歯を避けるような形で仮歯を3本作製しました。

大きな口を開けさえしなければ、取り敢えず、前歯が並んだように見える形態にしました。

図Fが拡大したところで、低位にある犬歯を裏側から引っ張れるようにしています。図Gが下から見たところで、ゴムによって内側に向けて力をかけています。

また、隣の右側側切歯(向かって左側の歯になります)は、スプリングによって、前方へ押しだす力をかけました。
図Hが矯正装置の全容で、歯列不正の顕著な左側犬歯及び右側側切歯に矯正力がかかるようになっています。

E

F

G

H

I

J

矯正装置を、今回のような床タイプの可撤式(取り外し)にするか、リンガルアーチに弾線を付与した固定式の装置(詳細については、歯並びの話の第7回 「矯正装置あれこれ・・・第1話」をご覧下さい)にするかは、議論の分かれるところですが、装着時間さえ守っていただければ、可撤式でも十分治療は進みます。

図Iが治療を開始してから3ヶ月後で、臨在歯を順次仮歯に変えながら矯正装置の調整を続けているところです。下顎前歯部については、ジスキングによりスペースをつくり、アクアトレーにて叢生の改善を図りました。

図Jが7ヶ月経過したつい先日の状態です。上下前歯部は、全て仮歯です。歯頚部ラインもほぼ整ってきました。今後、患者さんの要望を聞きながら、各歯牙の形態を微調整して最終補綴物へ移行していく予定です。

矯正治療のみ、あるいは、補綴治療のみでは、良質な治療法を提案できないケースに日々の臨床では非常に頻繁に遭遇します。かかりつけ医としては、広い視野から考察できるだけの知識が絶対必要です。

最終的には、患者さんとの相談の上、治療法が決定されます。歯科医が考える最善の方法を、患者さんが選択するとは限りませんが、幾つかの治療法を提案することによって、患者さんの希望に近い処置が行えるようになるのではないでしょうか?

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