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第30回 最新の治療法(インプラント矯正)

昨年の矯正学の専門誌に、日本の場合、歯科医が矯正治療をしたほうがいいと判断した100人のうち、実際に治療を行う人は、約7人というデータが出ていました。

 つまり10%以下ということです。この事実は、現場にたずさわる一人として重く受け止めなければならないと思っています。歯列不正の多くは、放置することによって悪化し、審美障害だけでなく、虫歯や歯周病、かみ合わせ、発音、顎関節への影響等いろんな障害を誘発する因子になります。

 私たち専門家は、歯列不正が疾病の一つである以上、もっと矯正治療が受け入れやすい環境を作っていかなければいけないと痛感しています。

 矯正治療はしたいが、どうして踏み切れないのか、患者さんの立場になって考えてみた時に治療するかしないか、迷われている理由を私なりに大別してみました。 

①治療費が高額である
②治療期間がかかる
③抜歯や外科が必要?
④装置装着への抵抗感
⑤治療中の歯の痛み

 たぶん、①が理由で治療を断念される方が一番多いと思います。が、なかなかの難題といえます。自費治療ですので、医院により治療費にばらつきがかなりあるのが現状です。医療というのは、物を売る仕事ではありませんので、安ければ良い、というものではないと思いますが、高すぎるのはやはり問題です。

  今の日本の矯正治療は、1ドル360円時代にアメリカから入ってきた考え方でほとんど行われています。アメリカでの矯正治療費は、現在300ドル前後ですから当時は100万円くらいということになります。でも、現在は、1ドル110円くらいですから、半分から3分の1の治療費が適正という考え方が一応成り立ちます。

 症例の難易度にもよりますので、一概に治療費だけを取り上げて、高い安いと議論するのはどうかと、思いますが、あくまで私見ですが総額で100万円を超えるような治療費はちと高すぎると思います。

 治療費については、院長からのメッセージの第8回<歯の矯正費 医師の裁量?・・・>をヒントにしてみて下さい。

 上記の④と⑤に関しては、矯正材料、装置の種類やテクニックの進歩により、患者さんの要望に近い治療方法をかなり選択できるようになってきましたので、術前に十分なコンサルテーション、シミュレーションを行えば、回避できる要素ではないでしょうか。

 ③の抜歯や外科についてですが、ここ1、2年、矯正の業界では、非抜歯ブームが続いていますが、”抜歯や外科=悪”、”非抜歯=良”という発想は危険です。非抜歯を基本に、ケースバイケースというスタンスを私はとっています。若年者ほど非抜歯での治療計画が立案できる、という話は何度かしてきました。今回のテーマとはずれますので、またの機会に症例をまじえてお話してみたいと思います。

また、前置きが長くなってしまいましたが、今回の本題である<インプラントを利用した矯正>について話を進めたいと思います。

 インプラントを利用した矯正は、上述の②に一番関係します。治療期間が短縮できます。また、患者さんにとって一番不快な装置である顎外固定装置(口の外につける装置)が不要なことや、歯科医の立場からいえば、今までは動かすことがほとんど不可能だった方向への歯の移動が可能なため、外科が必要だった症例を非外科で行えるといった矯正治療自体の守備範囲を広げる画期的な一面をもっています。

 今、まさにインプラント矯正は、矯正業界の最新トピックスといえます。臨床応用が始まった2,3年前の矯正用インプラントは、インプラント体の脱落や破折、操作性が悪い、といったいくつかの問題を抱えていましたが、現在では、バリエーションの豊富さ、術式の確立等によって、治療する上では、非常に有効な手段になってきました。私は、2年ほど前より症例を選んで使用していますが、材料の進歩が目覚しいという実感をもっています。今後、ますます普及していくことは必至です。

 ”インプラント矯正”の特徴、留意点等について、私なりの見解をお話してみたいと思います。


矯正治療で使用するインプラント(人工歯根)は、直径1.2~1.8㎜、長さ4~10㎜程度のごく小さなものを利用します(図A)。インプラントを動かない場所(固定源:アンカーという)として歯牙の移動を行います。

 インプラントは、歯根と歯根の間や最後臼歯の後方部などの顎の骨の中に埋入します(図B、C、D黄色丸、緑色丸、青色丸等)。

 また、歯の裏側につける”見えない矯正”を行う場合は、図E黄色丸、緑色丸、青色丸)のように、上顎の裏側に埋入することもあります。

 インプラントを固定源にするため、アンカーロスと呼ばれる固定源の歯が移動してしまうことがないため、動かしたい歯牙だけを移動できます。また、多数歯を同時に動かすことができますので、治療期間の短縮にもつながります。

A

B

C

D

E

図F黄色丸の場所にインプラントを埋入して、側切歯と犬歯の間につけたフックにスプリングを引っ掛けて、前歯6本を同時に抜歯した第一小臼歯のスペースへ後方移動させています。

 図Gでは、前歯がかなり移動されているのがお分かりいただけると思います。

 通常の治療法ですと、犬歯だけを後方へ移動させないと、後方の歯(大臼歯)が前方へ多少は移動して、アンカーロスしてしまいます。アンカーロスを防ぐために適宜ヘッドギアーなどの顎外装置を併用することもあります。

F

G

H

I

図Hは、過蓋咬合(かみ合わせが深い)の場合に、前歯群の圧下(歯ぐきの中へ押し込む)にインプラントを利用しているところです。図Iで、かみ合わせがかなり浅くなってきているのがお分かり頂けると思います。歯牙に圧下の力をかけるのには、インプラントが非常に有効です。

 インプラントにアンカー(固定源)を求めれば、一歯単位のMTM(1,2本歯の小移動)的な利用から、顎外装置でしか成し得なかった多数歯の同時の移動を行うために強めの力(500g~)をかけることも可能です。臨床的には、応用範囲が広く、治療する上での”武器”になることは確実です。

 インプラントを利用した矯正治療の特徴を私なりに列挙しますと、

①絶対的な固定源が得られる
②多数歯の同時の移動が可能
③従来の治療法では困難であった方向への歯の移動が可能
④患者さんの協力が不必要(顎外装置が不要)
⑤治療期間の短縮が可能
⑥外科的な処置が必要

 上記の⑥以外は、全て長所といえます。ただ、インプラントを利用した矯正に問題点がないかというと課題はあります。

 どこにでもインプラントを埋入できるわけではないので、フォースシステム、フォースコントロールについての十分な理解を持った上で、埋入位置を決定しなければならないのは必須の知識といえます。また、埋入するインプラントの直径、長さ、埋入方向等については、使用目的によって使い分けが必要ですのである程度の臨床経験がいります。

インプラントを利用した矯正は、今後ますます普及していきますし、欠かせない手法の一つになることは、確実です。絶対的な固定源や圧下移動を行えることは、非抜歯治療の可能性を広げますし、顎矯正手術のメカニクスの選択にも変化をもたらすと思われます。

 インプラント矯正は、患者さん、歯科医双方にとって有益なアイテムです。

 私たち臨床家は、矯正用インプラントの材質、形態のさらなる改良、開発により今以上に使いやすくなっていくことを切に願っています。

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