第143回 ODC例会・・ルーペ、マイクロは必需品
年度末に向けて、医院内外でさまざまな取り組みがあり、怒涛の忙しさを過ごしています。
11月15日、22日、23日は東京に行ってました。マイクロスコープのセミナー、スタディグループでの自身の講演でした。東京の優秀な歯科医や向上心の高い歯科医との交流は、自身の立ち位置の確認、そして何より学習意欲が高まります。今週の金曜~日曜も東京です。
また、先週土曜日は私が所属している歯科医のスタディグループ、ODC(Okayama dentists club)の例会を行いました。約30名の参加者の中、夜7時から4時間余りの長時間に渡り、有意義な時間を共有しました。いつも本当に熱心に実習して頂き、スキルアップへの並々ならぬ取り組みを感じます。
今回は、支台歯形成(被せを作製するために均一に歯牙の削除を行うこと{Tooth preparation})を行う際に必要な基本的知識の確認と模型を使用した実習を行いました。
上図は、先日私自身が支台歯形成した歯牙のフィニッシュラインを中心に、最終チェックをマイクロスコープを使用して16倍の拡大視野で確認しているところです。精度の高い操作、作業には、もはや裸眼では不可能な時代です。
ということで、今回は、拡大ルーペを参加者全員に使用して頂き実習を行いました。そして、参加者各人に、形成した支台歯の模型の最終確認は、マイクロスコープ下で行って頂きました。
最初にプロローグとして、世界標準の基本的な支台歯形成法と必ず押さえておくべきポイントについてのベーシックな話をさせて頂きました。
そして、フィニッシュライン(歯と被せの境の位置)の目的に応じた形態・設定法、歯周環境を整えることの重要性とその基準についても触れました。
歯周組織の状態と補綴物との関連は常に意識して支台歯形成に取り組まなければ、良質な補綴物の作製はできず、長期的には必ず問題が生じます。
臨床的な講義の後、O社とY社の全面協力の下、前歯、臼歯のオールセラミックの形成の実習に移行しました。協賛メーカーの方には本当に感謝しています。今後とも、宜しくお願い致します。
経験豊富なドクターには少し物足りない内容であったかもしれません。申し訳ありません。ただ、ベーシックなスキルと知識の確認・反復は、歯科医のレベルに関係なく必ず新たな発見があると思っています。
とても地味な作業のようであっても、繰り返すことにより経験値が上がり、精度の高いクオリティーの高い仕事ができるようになります。
拡大視野での作業は慣れるまでは大変な面もりますが、”今まで見えなかった所まで見える”ことにより違った世界が拡がります。
場合によっては10μ(ミクロン)単位の仕事が求められる私たちの歯科医療業務の中にあって、拡大ルーペやさらに細かい作業を行うためのマイクロスコープは、必要不可欠な手放せない機器となってきました。
また、日々の臨床ではスルーされがちな精度の高い印象採得(歯の形態の型どり)に必要な”歯肉圧排”という補助的作業にもスポットを当てた話もさせて頂きました。
私が知る限り、確立された歯肉圧排法が存在しません。明確なガイドラインが存在しません。歯肉のBiotype、付着の量などにより歯肉圧排後の辺縁歯肉の反応が異なる悩ましい作業です。
いつも例会の話の中で強調しているのが、私たちの日々の臨床は、細かなステップの正確で確実な積み重ねによって、始めて良質な結果が得られる、ということです。要は自分自身が、”どこまでこだわるか?”に臨床の結果はかかっているとも言えます。
歯を削るバーも、さまざまなメーカーから各種発売されています。目的意識を持って使い分けるべきです。
そしてメタルフリーの時代が叫ばれるようになり、前歯・臼歯ともにオールセラミックでの支台歯形成が基本となっています。
精度の高い補綴物を歯科技工士に依頼・作製してもらうためには、フィニッシュラインの連続性が求められます。
ラダー・プレパレーションにならないよう、辺縁歯肉のスキャロップに応じて滑らかな曲線で、しかも均一な削除量にすることにより内部応力の分散が図れます。
最終仕上げとその良否のチェックには、どうしても拡大視野が必要です。
左図の最後の2枚の写真は、マイクロスコープ下で16倍の拡大像です。遊離エナメルや切削片の残存、フィニッシュラインの凹凸が瞬時に判明します。
当クリニックでは、補綴の前処置として歯周外科や矯正を行う頻度が非常に増えました。他医院からの紹介で全顎的な補綴のやり直しを行う場合などは、当然難易度が高くなります。包括的な治療への取り組みには、多分野の処置ををリンクした治療介入になるケースが多くなります。歯周ー補綴ー外科ー矯正は、ある意味ひとくくりとして考える時代です。
話が変わりますが、心理学の用語に、”スモールステップの原理”というのがあります。
1)小さな行動
2)楽しい行動
3)毎日できる行動
少しずつ、小さいことからコツコツと自分のスキルを上げる以外方法はありません。と置き換えれるでしょう。
来月のODC例会は会員発表です。6人のドクターによるケースプレゼンテーションが行われる予定です。活発なディスカッションができればと思っています。