第105回 ”クインテッセンス”に掲載されました
歯科医なら誰でも知ってる歯科専門の学術誌である”クインテッセンス”の7月号(本日発売)に、私のケースリポート(論文)が掲載されました。詳細は、このページをご覧下さい。
”クインテッセンス”と言えば、論文やエビデンス(証拠)に基づいたコンテンツ(内容)は当然として、掲載写真のクオリティー(品質)も高く、時代を先取りした歯科専門誌で、臨床家にとってはある意味敷居の高い学術誌とも言われています。
毎回、日本を代表する歯科医が、専門分野の知識、技術を駆使した術式、ケースを紹介しています。私たち臨床家にとっては、日々行う診療の指針・指標が提示されていて、バイブル的要素の強い本といえます。
マイナーな修正はしたものの、ほぼ原案通りのコンテンツでアクセプトされ、掲載して頂けたことは、自信につながりましたし、査読委員のコメントは、今後の自身の臨床の向かうべき方向性の一助になりました。
編集部、査読委員の方々、いろいろとお世話になりました。
今回、自身の症例を投稿したのには、幾つかの目的があってのことです。一番の理由は、”日々行っている診療の一端を査読委員に審査して頂き、批評を浴びることにより、明日からの臨床の糧にしたい”、という思いがありました。読者に有益なコンテンツでなければ、論文自体がリジェクト(拒否)されます。ある意味、第三者機関による厳しい評価を受けるようなものです。
もう一点は、誰もが認める日本の歯科界を牽引している一流の査読委員の方々が、私の診療理念である”患者本位””患者主導”の考え方をどのように評価してもらえるか、というある種の興味がありました。
昨今、”患者本位””患者主導”と言いながら、実は、”歯科医の自己満足型”の治療が行われている感が否めません。
治療後の予知性や患者さんの要望を無視して審美だけを目的に抜歯や切削、オペを必要以上に何回も行うケースや、逆に、患者さんへある治療法のメリットのみを強調し、低浸襲で腫れや痛みが皆無であることを前面に押し出してフラップレス(歯茎をめくらない)でのインプラント処置を行い低品質の結果や偶発症を発症しているケースに頻繁に遭遇します。
本論文の中で、”インフォームド・コンセント(説明と同意)”より一歩進んだ”インフォームド・セレクション”という言葉を使って、多種多様の治療選択肢全ての中から実際に行う治療法を患者さんと歯科医がともに考え決定することの重要性を私自身語っています。
大学卒業後、補綴科(義歯や被せの研究、診療を行う診療科)の医局に残り、補綴科出身の一般開業医である私が、敢えて自身が行った矯正の臨床ケースを掲載しました。
大半の歯科医がかかりつけ医であり、歯科治療全般を行うと言いながら、”矯正”という分野だけは、専門医へ丸投げしているのが現状です。
建前では総合的な治療を行っていると言いながら、歯科医療の4本柱である”保存、補綴、外科、矯正”の内、矯正を除く3本で勝負している臨床医が多いと感じます。患者さんにとってはとても不幸なことです。4本柱を平等にコンビネーションしたプランニングの提案が1歯科医ができること、行えることは患者さんへ多大な受益をもたらします。
当学術誌の当月号(7月号)の文頭の特集で、”患者本位の治療とは?”という特集が組まれています。自身が行える行えないに拘らず現在の歯科医療として行える治療選択肢を全て提示することがコンサルの出発点、と述べられています。私も同感です、そのためには、不得意分野、知らない、できない分野を失くすことが必須となります。一般開業医には最も敷居の高い”矯正”のスキルの習得は避けては通れない時代なわけです。
歯科関係者の方には、是非ご一読頂き、ご意見、ご感想をお聞かせ頂ければと思っています。厳しいご批判こそが、私の日々の臨床のスキルアップに欠かせない、と考えています。
来月、再来月は、韓国、ヨーロッパへと海外研修に出かけ、一週間程度留守にします。9月には、スタッフもスウェーデンへ研修に出かけます。グローバルな動き、トレンドとともに、確かな技術の習得を身につければと思っています。
また、少し先になりますが、10月には私の主幹するスタディーグループ主催の外部講師による対外的なセミナーを企画しています。包括的治療を行うためのスキル習得に必要な講演内容で、しかもチーム医療の重要性、手法にも触れるスタッフにとっても実になるセミナーになるはずです。
今後も、同志とともに後進国と呼ばれている岡山の歯科医療の底上げの一助になる企画や座談会等を積極的に行っていきたいと思います。