第151回 出会いこそ成長の場!・・(同窓会会報)
私の母校である徳島大学の同窓会(通称:蔵歯会)会報の原稿執筆の依頼を受け、書いた内容をご紹介したいと思います。
以下が会報に掲載されました。
記
平成元年に卒業し、早いもので25年の月日が経ちました。卒後、実家のある岡山に戻り、同期の現在津山市で開業されている永禮先生と岡山大学歯学部第二補綴科(現在は咬合・有床義歯補綴学分野)に入局し、5年間在籍後勤務医を経て開業しました。医局時代は、真夜中まで教室に入り浸って、先輩から仕事以外のことも教えて頂き、今となっては、楽しい思い出ばかりです。
開業してからの2,3年は、”経営と臨床のバランスの難しさ”にもがき苦しみながらの日々だったと記憶しています。その後、“臨床の楽しさ”に目覚め、高品質な包括的治療を習得・実践したい!と思うようになり、全国各地、海外のセミナーへも参加して、各専門分野のメンターと出会い、交流を通じて指導・教示して頂きながら、少しずつ臨床力がアップしていったように思います。
欧米のように専門医制度が確立されていない日本の歯科界においては、各分野の複数の専門医が治療計画段階から密に連携して治療にあたるいわゆる、Interdisciplinary therapy(Interdisciplinary Dentofacial Therapyの中でRoblee RDが提唱、1994年)を日常的に行うことは現実問題として不可能であると考え、1名あるいは1歯科医院において持っている能力とバックグラウンドの中でどこまで臨床を極めれるか?模索するようになりました。その姿勢は、20年前も今も変わっていません。そして、各専門分野のメンターとのお付き合いが、日常臨床での岐路に立った時の羅針盤のような役割を果たしてくれています。
一方、地元岡山では、8年前にODC(Okayama Dentists Club)という学術に特化したスタディグループを立ち上げ、同志とともに例会での会員発表や実習付きサブ例会、外部講師による講演会などを通じて、“1人で総合的にアプローチできる歯科治療(Unidisciplinary therapy)”を行うための臨床力アップに向け、研鑽しているところです。年齢を問わず、インプットとアウトプットをバランスよく行うことにより、自身の仕事を見つめ直す機会が増え、仕事へのモチベーションを維持できるのではないか?と考えています。
年齢を重ねるにつれ、長期症例を観察する機会に出くわすようになりました。
”Evidence Basedな臨床を!”とよく言われますが、自身が治療介入した結果・予後から得られる”Experienced Based”から得られることのほうが、もっと重要ではないか?と考えるようにもなってきました。最近では、自身の15年以上の経過症例を観察できる機会に出くわすと、臨床を見つめ直す絶好の題材を患者さんから与えられていると感じ、患者さんこそ私にとって最も大切なメンター・先生であると実感する次第です。
ところで、私の唯一の趣味と言えるのは”水中写真”です。水中に広がる異次元の世界、浮遊感の虜になって20年以上が経過します。今では1年に2.3回ですが、少し長めの休暇をとり、日々の雑踏から逃れ、水中でのひと時のスローライフを満喫しています。
希少生物に出くわした時の感動、未知の世界に踏み込んだわくわく感を感じつつ、世界の海へ出かけています。水中写真の魅力、うんちくを語ると長文になってしまうのですが、一言で言うと、自分がイメージした写真を撮るのに困難を極めます。もしだれでも簡単にきれいな写真が撮れるのなら、すぐに飽きてしまう趣味でしょう。私にとっては、異国の場所で、始めて会う異業種の方々と水中の魅力について語り合えるこの上ない気分転換のひと時です。
話が戻りますが、歯科臨床はある意味肉体労働の側面があり、仕事がばりばりできるのもここ数年かとも思ったりしています。自分自身の臨床力のアップは当然必要ですが、これからは、若い歯科医が歯科界に夢が持てるよう何か手伝いができないか?アウトプットに力を入れたいと思います。
先日、同期の上岡君が、岡山大学歯学部矯正科の教授に就任するという喜ばしい出来事がありました。学生時代苦楽をともにした同期生の活躍は、自分のことのようにうれしいし、刺激になります。
出会いこそ成長の場!今後も多くの魅力的な方と出会えることを楽しみにしています。