第21回 見せるインフォームド・コンセント!
インフォームドコンセント(十分な説明をした上での同意)を得ての治療行為が叫ばれて久しいのですが、歯科業界の現状は、まだまだ不十分と言わざるを得ません。メールの相談の中には、歯科医と患者さんの意思疎通からくるトラブルと思える相談が多々あります。
そこで、今回は治療前、治療中、治療後を通して治療内容の理解を少しでも深めるための”見せる”道具について、市販されているものから当医院で作製し、独自に使用しているものについても触れてみたいと思います。
従来から口頭での説明は、当然行われています。ただ、”百聞は一見に如かず”といいます。開業医である私たちは、毎日そんなに特殊な治療ばかりをしているわけではありません。
よく似た症状、よく似た治療をしているのです。例えば、不幸にして”歯の神経を取らざるを得ない”とか”抜歯しなければしかたがない”等・・・。頻繁に出くわす治療については、事前にいくつものグッズ、手法を用意しておけば視覚に訴えることで歯科医と患者さんのイメージの溝が短時間に埋まるのではと考えています。
また、被せやブリッジ、入れ歯などの補綴物が数種類組み合わされた商品や、保険と自費の入れ歯の違いがわかるように製作されたもの
(図B)などは、患者さん自身が手にとって感触も確かめることができますので、有効です。以上のような商品は、あくまで既製品ですのでイメージの膨らみにも限界があると言わざるを得ません。
次に、リアルタイムで、患者さん個々への説明のために利用されるのが、図Dの口腔内CCDカメラです。出始めだった7~8年前にはカメラ本体が大きく性能的にも満足のいくものではなかったのですが、現在では、動画もそこそこですし、静止画は、PCやビデオスキャナーで取り込み、プリントアウトして、患者さんに手渡しすることができますし、子供さんへの治療前導入の動機付けの道具としては、もってこいのグッズです(図E,F)。
大型モニターに出力すれば、見えにくい奥歯の奥まで拡大した像として明瞭に認識できます。
そして、デジタルレントゲン(図G)。これは優れものです。従来から使用されていフィルムのような現像処理はいりませんので、撮影後、ほとんど待たずに歯の写真の説明が行えます。最大のメリットは、デジタル処理していますので、拡大縮小、コントラストの調整等、画面上で自由に編集できる点です。
治療前後のX線写真も一画面で見れば、どこをどう治療したかが、一目瞭然です。目の不自由な方でも数倍に拡大した歯の像で説明すれば、問題なく理解してもらえます。X線被爆量も従来の1/10で非常に安全な装置ともいえます。
ここからは、当医院で行われている”見せるインフォームドコンセント”について少しお話したいと思います。
上述しました既製品のパンフレットや口腔内CCDカメラはもちろんのこと、この秋、デジタルレントゲンを導入しました(図H)。
各診療台のモニターからは、いろいろなインフォームドコンセントのためのグッズが呼び出せるようになっています。各診療台に設置されたPC(ハードディスク内)には、当医院で作製した各種治療法、当医院で行われてきた症例が50を超えるファイルに分類されています(スライドにすると500枚以上)。
治療中の患者さんの術前、現在までの治療の進行状況なども画像を中心に保存していますので、適宜呼び出せます。患者さん自身が、麻酔が効くのを待つ時とか、被せをつけた時に接着剤が固まるのを待つ時といった、ちょっとした空きた時間に、触りながら歯科の知識を学べるようにも設定しています(図I,J)。プリントアウトは即時できます。
待合室には20型のモニター(図K,L)を設置し、受付で管理されており、待たれている患者さんの層を見ながら、アニメーションをつけたスライドや、当医院で行っている各種治療法の動画を映して歯科知識の啓蒙を促しています。TVやDVDもタイムスケジュールを組んでスポット的に取り入れています。
また、パンフレットも重要と考えています。患者さんへの口頭での説明、モlニターを利用しての説明は重要ですが、その場だけですので、時間的に限界があります。治療方法を患者さん自身に決定してもらわないといけない場合もあります。そのような時、帰り際に、治療方法の詳細な記述、治療方法の選択基準、費用などを書いたパンフレットを渡して、「一度自宅でじっくり検討してみてください、次回もう一度相談しましょう」、という時に有効です。
当医院では、自医院で作製した20種類以上のパンフレットを用意し、適時利用しています。(図M)。
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