第20回 PMTCに要注意!
また、Jのように、根面キャップ といって、歯の根の部分に蓋をしているような修復物がある場合には、歯茎にあたりかげんになるので、柔らかいチップで、 低速で行わなければいけません。
先につけるチップも、Cのようにブラシ状のものから、柔らかい シリコンカップ状のものまであります。
Dは、実際に歯面にあてているところですが、 健全な硬いエナメル質部分は、チップの大きなものを用い、E のように、歯列不正がある狭い部分は、先の細いチップを用います。
一番注意が必要なのは、歯の硬さは一律ではない、という点です。 修復している歯は、歯質より硬い材料もあれば、柔らかい材料もあります。修復している材料によって、 チップとペーストを使い分けをしなければいけません。
次に、修復している歯についての場合ですが、Hは、 見た目は、健全歯のようですが、前歯2本は、ラミネートベニアといって、 歯質より硬いポーセレンという材料でできています。硬い材料を研磨する場合は、目の細かい研磨剤を少量つけて、 やや高速、軽いタッチで行う必要があります(図I)。
また、Jのように、根面キャップ といって、歯の根の部分に蓋をしているような修復物がある場合には、歯茎にあたりかげんになるので、柔らかいチップで、 低速で行わなければいけません。
それでは、本題の”PMTCに要注意”について、話をすすめていきたいと、思います。
ここ1~2年、PMTCを積極的に取り組む歯科医院が増えています。その背景には保険行政が、治療後のメインテナンスを評価し、 予防処置を重要視する傾向に向かっているという点が上げられます。また、日本人の”美”への意識向上により、エステ感覚でPMTCを患者さんに提供する 医院も、登場しています。患者さんが、口腔内の爽快感や滑沢になった歯面を通じて効果を体験しやすく、有効な予防処置といえます。
しかし、マニュアル化されたPMTCの弊害もあります。患者さんの口腔内というのは、 年齢が増すにつれ、多種多様の治療経験を持っていることが多く、複雑になっています。装着されている捕綴物(被せや詰め物)の形態、材料は、 硬い金属(ニッケルやコバルトの合金)、 普通の硬さの金属(12%金銀パラジウム合金)、 柔らかい金属(銀合金等)、 ポーセレン(硬い詰め物や被せ)、レジン (柔らかい詰め物)など混在していることも珍しくありません。
そのため、PMTCを行うにあたっては捕綴物、修復物の種類や特性を踏まえて、清掃法や研磨剤を選択して処置を行うことが不可欠です。
術式を誤ると、
①歯冠表面の艶が消失する
②歯冠用硬質レジンや金属表面に傷がつき、腐食や変性が発生する
③その傷や腐食部がさらにプラークの沈着しやすい悪循環になる
など、素材を考えずに選択した研磨剤によって捕綴物、修復物の劣化や破壊が進むこともあります。
最近、テレフォンショッピングなどの通販で、”ホームデンタルエステ”と称して、左図Kの歯面清掃器具が販売されています。ラバーチップをを先端につけて回転させます(図L、M)。
構造的には、歯科医院で行う道具と似ているのですが、先のチップや研磨剤の種類が限られているので、硬さが違う歯の面全体を同じ調子で一律に磨くと、前述しましたように、逆に凸凹ができてしまい、汚れがつきやすくなる危険性をはらんでいます。修復物が全くない人の場合は、ある程度効果がある道具といえるかもしれません。
また、回転のスピードが変えれないので、どうしても歯面に強く押し当ててしまう傾向があるので、注意が必要です。
最近、歯科医院で行っているPMTCの方法について少し触れたいと思います。
ラバーカップや、ブラシなどの回転式器具では取り切れない汚れというのがあります。
先のチップは、木製のものから、 平たいもの、V型のものなどがあり、 細部の清掃ができる形態になっています(図P)。
木製チップ(図Q)は、あたった感じがプラスチックに比べ 柔らかいので、知覚過敏のある歯や、レジン修復した部分に適しています。
狭い歯間部や、一番奥の歯の後ろ側には、図R、 Sのような平たい形のチップを使用すれば、研磨も可能です。
PMTCは、メインテナンスや、予防において、重要な役割を果たしてくれる 処置ではありますが、器材の選択、術者の知識、技術に頼るところがあります。
術者の知識如何によっては、その目的とは 逆行することもあり得ることも心しておくべきだと、思います。
また、自宅でのクリーニングは、リスクが伴うことも認識しておくべきです。