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第19回 知覚過敏症 増加中!

最近、「虫歯はないと思うんですが、 歯がしみるので、診てほしい」 と来院する方が、増えています。

 一昔前までは、「しみて痛い」という患者さんの訴えに対しては、歯を削って抜髄 (歯の神経を機械的に取ってしまう)するという手段で応えてきました。

 しかし、”歯をなるべく削らない治療”が主流になってきた現在では、抜髄処置は最後の手段でありできるだけ避けたい処置です。

 歯自体に起因する痛みは、大別すると、歯髄 (歯の中央の神経や毛細血管がある部分)の痛み」と、「象牙質 (歯髄の外側にある歯の大部分を占める部分)の痛み」の二つです。 虫歯による歯髄の痛みの場合は、穴のあいた部分に詰め物をするか、虫歯が大きい場合には抜髄も止む終えない場合があります。

 今回、お話ししたいのは、虫歯が原因ではない象牙質の痛み、「知覚過敏症」 についてです。
「知覚過敏症」の原因、メカニズムについてだけでなく、予防法、治療法の最前線にもふれてみたいと思います。

図A のように、歯垢や歯石が付着していて清掃状態が不良だと、 「歯周病による象牙質の痛み 知覚過敏症」を疑います。 象牙質に付着した細菌性プラークの産生する酸によってしみたり痛んだりします。

 また、図Bのように、 不適切なブラッシングを続けていると、歯の根の部分が出てきて、しみやすくなります。ほとんどの患者さんは、 歯がしみる原因の全てが虫歯と思っています。歯周病という概念はなく、知覚過敏についても虫歯を心配して来院されますが、 一般に、歯周病が進行しやすい中高年の方の場合、虫歯よりも歯周病が原因で歯がしみる場合が大半です。

 歯周病が原因の場合、徹底的な歯石の除去と、適切なブラッシング指導で改善する ケースが大半です。 


 この患者さんは、口の中全体が”しみて痛い”といって来院されました。特に下の前歯が腫脹(腫れていることをいう)しています。硬い歯ブラシでゴシゴシ 磨いていました。

 適切なブラッシング法と、口腔内の清掃によって、歯肉の腫脹は軽快し、 知覚過敏の症状も全くなくなりました。

「知覚過敏症」の原因は他にもあります。夜間の 歯軋り(ブラキシズム)により、歯と歯肉の境のところに楔状の欠損ができ、象牙質が露出してしまい知覚過敏の症状がでることがあります。

 知覚過敏のメカニズムについて一番有力とされている学説に、 「動水力学説」というのがあります。

 これは 象牙質に加えられたさまざまな刺激(機械的刺激、温度刺激、圧力、化学物質、乾燥など)により、象牙質内の象牙質細管内溶液が 移動して、歯髄側の神経線維を興奮させるという説です。(図C)

 詳しい原理は省きますが、歯自身が防御反応として痛みを訴えているのです。ですから、放っておけば 最終的には歯髄が死んでしまいますので、象牙質に何らかの
バリア(壁)を作る必要があります。

 「知覚過敏症」に対する治療法、予防法についてですが、 歯周病が原因の場合は、歯石除去を含めた口腔内の徹底的な清掃と、適切なブラッシング法の指導を行います。 

  自宅でプラークコントロールができているか、を毎回確認します。歯磨き剤については、ノンペーストか、研磨剤非配合 のものに変更してもらいます。歯軋りなど、かみ合わせに原因がある場合には、咬合調整をしたり、楔状欠損の箇所をセメントやレジンで被覆する こともあります。

 自宅できることとしては、軽度の知覚過敏症であれば、象牙質細管内溶液の移動を阻止する硝酸カリウム配合の知覚過敏用歯磨き粉(シュミテクト)は、 効果があります。(図D)

 また、診療室では、、MSコートといって、 歯に塗布して象牙細管を封鎖してしまう知覚過敏用の治療薬も頻用されています。(図E) 

 知覚過敏用の塗布剤と併用してレーザー照射 を行うとさらに効果が上がります。(当医院で実施中)
  

知覚過敏症は、象牙質の露出によって起こります。歯周病が進行すると、 歯根面が露出して症状が発現しやすくなります。歯周病を悪化させないことが何よりの予防です。 

 また、長年の歯軋りも原因になりますので、歯軋り防止のマウスピースを装着することも 一法と考えられます。早期に発見して、自宅での知覚過敏専用の歯磨剤の使用や診療室での レーザーを併用した塗布薬も非常に効果があります。

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