診断力を磨く!
私が担当のぺージがご無沙汰で申し訳ありません。諸事情により多忙を極めていました。
私が最近考えている日常臨床への取り組み方について少しお話させて頂きたいと思います。
テキストばかりになることはお許し下さい。
歯科臨床医にとって、最も必要な能力は何か?と問われれば、迷わず「診断力」と答える。
「診断」とは、“患者の病状を検査、診察して行う医学的判断で、改善や治療のための示唆、勧告、指示を含む”と定義されている。
では、日々来院される患者さん1人1人への的確な診断が、果たして適切に成されているのであろうか?
診断が間違っていれば、いわゆる誤診という範疇になり、どんなに素晴らしい治療方針を計画し実行しても患者さんを治癒に導くことはできないばかりか、病状を悪化させてしまうことになりかねない。
歯科医、特に若い先生は、技術を磨くことに重きを置いてセミナーや講習会に出かけ、専門的な手技を身につけることで日々レベルアップをしているのだが、「診断力」を磨くことの大切さをどの程度認識しているのだろうか?
多くの歯科医院で行われている一般的な検査では診断できない患者さんの来院が後を絶たない。遠方(九州や四国、山陰)から、治療しているのに治らないためセカンドオピニオンを求めて来院される場合もある。主症状は口腔内にあるのだが、炎症所見(虫歯や歯周病)は軽度かほとんど見当たらない。
例えば、患者さんは下記のような症状を訴える。
・噛みにくい、飲み込みにくい
・舌が痛い、舌が圧迫される感じ
・歯科治療を最近受けていないのに、噛み合わせが変わった気がする
・歯全体が浮いた感じで、頭痛や首の痛み、めまい、吐き気がひどい
・ウ蝕や歯周病に罹患していないのに歯が痛い、鈍痛がある
・咬合接触が十分あるにも拘わらず、全然噛めない
・しゃべりづらい
・噛めないことはないが、しっかり噛み切り難い
・口の中が窮屈で、顔面の不快感がある
・顎の動きは悪くないのに、顎がだるい、肩こりがひどい
通常歯科医院で行う検査をしても原因が見つからないため、所謂「不定愁訴」と決めつけていませんか?
このページを読まれている同業の歯科医の方は、上記のような患者さんの訴えに対してどのように対処されていますか?
医科的発想では、客観的所見に乏しいため、うつ病や心身症、身体表現性障害、気分変調症、パニック障害、自律神経失調症などと診断され、対症療法に終始しがちな場合も散見されます。
私たちは“口腔を診るある意味プロ”なわけで、口腔内の形態異常から機能の問題点を推察することが求められています。
顎口腔系の機能障害の診断には、通り一辺倒の検査では原因が判明しないことが多々あります。
自身の知識や経験に裏打ちされた固定観念にとらわれていては、“診断”には到底辿りつけません。
私たち医療従事者は、生体のことを、ごくごく一部しか知り得ていません。
口腔に主症状があっても、原因が口腔にあるとは限りません。生体のメカニズムを深く知ることが歯科医に求められています。解剖学、生理学、細菌学、組織学、免疫学など基礎医学について学生時代に戻ってもう一度学習し直す、という姿勢が必要ではないでしょうか?当クリニックでの実際の症例については、追ってお話できればと思っています。
歯科医であっても、“全身から診る”という概念が根付いてほしいと思います。