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第58回 一症例入魂・・・(抜歯矯正を3ヶ月で治す!①)

日々診療していると、、多くの方との出会いがあります。いろいろな悩みを打ち明けられ、長い時間お話を聞くうちに、苦悩されている姿を目の当たりにし、”本当に何とかしてあげたい”という気持ちがこみ上げてきます。

何件もの歯科医院で相談されたが、”ご自身の希望する治療が受けられない、自身の要望に答えられる治療の提案が成されない!”と言った不満を訴えられる方がいます。

今回ご紹介する方は、数件の一般歯科医院、矯正専門医を受診されていました。公的病院にも相談に行かれていました。”自身の要望に答えうる治療プランが提案されないのだが、本当に不可能な要望なのか?何かしら治療法はないのか?”という相談で当医院へ来院されました。


主訴は”出っ歯””乱杭歯”を治してほしい!でした。
図A~Dが初診時の口腔内です。
①3ヵ月後に留学するのでそれまでに治してほしい!
②見える装置はダメ!
③歯牙の移動で治してほしい!
④入院の必要な骨きり(顎骨切除)は仕事を一日も休めないのでできない!

という要望でした。

出っ歯(上顎前突)の程度が大問題でした。上下の前歯の前後的なずれが15mmもありました。
上記の①~④の要望を全て満たす治療法を胸を張って提案できる歯科医など、まずいません。

D

”そんな無理な要望を言われても困ります、留学を終えて帰国してから十分時間のある時に治療されたらどうですか?”とある意味突き放した言い方をするのは、実に簡単なことです。

ほんとにそれで良いのでしょうか?

”矯正治療(歯の移動を行うOrthodontic な治療)は、1ヶ月に約1mmまでの歯の移動を行う”という大原則がありますので、3ヶ月でこのケースを治療完了させるのは、通常の矯正治療法では絶対に不可能です。
上顎骨自体の骨きり、切除を行えば、3ヶ月である程度出っ歯を治せますが、約2週間の入院が必要なので、ご本人の要望には添えません。

何件もの歯科医院で、”無理です!治療法はありません!3ヶ月は短すぎます!との返答でした。

本当に不可能なのか?私自身真剣に悩みに悩みました。
”不可能を可能にする”、と言えばちょっとかっこよすぎるかもしれませんが、治療全体の7~8割は治すことが可能という結論に達しました。”6ヶ月あれば、治療完了まで確実にこぎつけることが可能だったのになー”、と悔やまれます。当医院来院前に、2,3ヶ月悩まれていたことを思うと、本当に残念です。

少し横道に逸れた話をします。
一般的に、歯並びを治したいが、治療に踏み切れない方、躊躇されている理由は、以下の3点に集約されます。

①装置を長期間装着することや歯が動く時の痛みへの不安
②高額な治療費
③長期に渡る治療期間

私たち歯科医は、歯並びに悩まれている方が少しでも治療が受けやすい環境作りをしてあげることが必要であるし責務だと、常に思っています。

今回は、上記の”③長期に渡る治療期間”の問題への当医院での取り組みをご紹介致します。

抜歯しての矯正は、従来からの矯正治療法では、熟練した歯科医が行っても通常1.5~2年の治療期間を要します。なぜなら歯を移動させる速度(1ヶ月1mm)を守らないと、骨の添加が起こらないからです。抜歯スペースを閉じるのには時間がかかります。
ただ、ミニ・インプラントというアイテムを使用すれば、半年ほどは短縮できるようになりました。それでも1~1.5年くらいはかかります。

ところが、実は、”半年以内にはどんなケースも治療が完了する!”ことが可能です。ある手法を用いれば・・・・という条件付きですが。


図E、Fのように歯牙周囲の歯槽骨ををブロックに切断したり、皮質骨を穿孔することにより歯牙の移動を速やかに行うことが可能です。

”選択的歯周組織穿孔術(Selective periodontal decortication)”という治療法です。

E

F

Generson、Gantes、Suyaなど先駆的歯科医が20年以上前から行っている方法で、改良に改良が重ねられ、最近では”Corticotomy に骨移植を付加させた治療法”もウィルコーらにより考案されています。

「患者主導」、「患者本位」の歯科治療ということが叫ばれている昨今ですから、治療期間短縮が可能な治療法について、治療オプションとして必ず提案することが必要ではないか!と思っています。多くの長所を兼ね備えた治療法です。骨の脱灰、再石灰化がダイナミックに起こることから、術後の歯牙の安定にも大きく寄与します。

”大幅な治療期間短縮”は、治療に躊躇されている方への福音となることは間違いありません。

では、当医院の症例で具体的にご説明します。


図G~Nが初診時の口腔内です。図Gのように、口元は上唇が翻転し、頤が後退した典型的な上顎前突(出っ歯)の様相を呈しています。図Hのように口腔内の横からのアップでは、上顎の前歯が顕著に前方へ出ており、下の前歯は引っ込んでいます。
また、過蓋咬合(かみ合わせが深い)であることも見て取れます。

図I(右側面観)、図J(左側面観)からも上顎前歯部の前方転位、唇側傾斜、とともに上顎骨自体の前方への過成長が疑われます。臼歯部(奥歯)関係もⅡ級(出っ歯のかみ合わせ)で、4本抜歯は避けられないケースというのは一目瞭然です。

図K(上顎咬合面)では歯列弓が馬蹄形で、理想的な半円型とは程遠く、軽度叢生も認められます。
図L(下顎咬合面)は重度叢生で、狭小化した歯列弓といえます。

図Mの正面観では、下の前歯に上の前歯が覆い被さった”過蓋咬合”が顕著に現れています。図Nのように、上下の前歯のずれは、15mmと非常に大きく、”歯牙の移動で短期間に完了させるためには、それなりの工夫といいましょうか、策を講じないと到底不可能!”と、おわかり頂けると思います。

G

H

I

J

K

L

M

N

図Oがパノラマ像です。著変はないのですが、下顎の歯軸(歯の傾き)が小臼歯と大臼歯とで大きく異なるのが気になります。咬合平面が大きく湾曲している証拠です。治療上、この咬合平面の是正にはある程度時間を要する部分なので、治療期間短縮という側面からすると、厄介な病態といえます。

O

上顎前突が重度であること、咬合平面が大きく乱れていることは、治療の難易度の高低という問題よりも、治療期間がどうしてもある程度必要なケースといえます。

3ヶ月という期間限定の治療期間は、はっきりいって厳しいです。
しかし、”何とかしてあげたい”という気持ちも強かったです。
”歯並びを良くして留学したい”という切な思いに答えてあげたかったです。


そこで、「当医院で、ある治療法で行えば、7,8割は治る、つまり上下の叢生は治せるが、抜歯スペースを利用しての上顎前突は完全には治せない、若干の抜歯スペースが残るだろう、それでもよければ治療します」、ということを提案させて頂きました。

正直、少し悩まれたようでした。”完全には治せない!”というのは、私自身不本意な提案なのですが、できないことをできるとは言えませんので、限られた時間でここまでは治せる、という内容についてお話しました。

数日後来院された時に、”お願いします、できりところまでいいですので治して下さい”という了承を得ました。
”3ヶ月という短い期間ですが、全力でさせて頂きます”とお話し、直ぐに治療に取り掛かりました。

実際の詳細な治療経過については、長くなりますので、次回お話します。
さわりの部分を少しだけ触れてみたいと思います。

図Pが治療前の上顎咬合面観です。図Qが装置を装着した直後の状態です。左右の第一小臼歯は抜歯しました。見えない装置を希望されていましたので、裏側からの矯正装置にしています。

同日図Rのように、6前歯に関して、頬側、口蓋側の広範囲に渡ってのCorticotomy を行いました。抜歯窩周囲にもdecorticationを行っています。
詳細については次回お話します。いろいろな手技があります。適材適所にて手技を選択する柔軟な発想が必要かと思っています。

また、採血させて頂いて、図Sのようにご自身のPRP(多血小板血漿)と切削した際に生じた骨の削片を骨面に敷き詰めることにより、骨代謝が促進され、骨のリモデリングが急速に起こります。軟組織の治癒も早めますので、創面保護にも一躍かってくれます。


図Tが治療開始1ヶ月後です。図Q図Tを比べてみて下さい。図Qから図Tまでの治療を1ヶ月で行うことは、通所の矯正治療法では不可能です。

ワイヤーの交換は、このケースの場合、7日前後で行っていきます。ですから1ヶ月間で4度目の交換後が図Tということです。通常の矯正治療の4倍のスピードで行えます。ですから、治療期間が約2年必要な場合、広範囲にコルチコトミーを行えば、理論的には、半年で終了できる計算になります。

P

Q

R

S

T

また、図Tの左右青丸の場所に矯正用インプラントを埋入することにより、前歯群の後方移動をより確実に速やかに行うことが可能になります。

過蓋咬合の症例でもあるため、”バイトプレーン効果”の利用できるブラケットも使用しました。
リンガルの症例も、ケースによってブラケットを使い分けると効率よく歯牙が移動します。
オプションツールを駆使する柔軟さが求められる難しいケースです。

続きの話は次回します。
”治療期間の短縮”は、治療結果に左右する要素ではありませんが、患者さんにとっては、治療を始めるかどうかを決定する大問題といえます。

いつも、”患者さんの立場を考えた、できるだけ要望に沿った歯科医療を提供したい!”という思いで一杯です。
そのためには、”分野を超えて自身が行える治療法の幅を広げることに専念し、患者さんに還元していきたい”、と常に思いながら、診療に取り組んでいます。

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