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第59回 ”リカバリー”のほとんどは難症例・・・②

前回(第58回 ”リカバリー”のほとんどは難症例・・・①)の続きの話をします。

矯正治療に限ったことではありませんが、”リカバリー”というのは非常に難しいケースがほとんどです。紹介や転医されてきた時、何らかの治療が既に施されています。マイナス方向への治療が行われてしまった場合、まずゼロに戻して、本来の治療であるプラス方向へ導かなければなりません。

もし、抜歯のような不可逆的な行為が行われていたならば、ゼロに戻すことすら難しいケースがあります。そうなると、”治療そのものを最初からしなかった方が良かった”、と言えなくもないです。

ですから、確固たるゴールを目指せるスキルを持ち合わせてから矯正治療に臨むことが当たり前なわけです。モラルの問題といえます。

では、下記の症例で話を進めていきます。

図A~Gが当クリニック初診時の状態です。20歳の女性です。前担当医から矯正治療は終了したと告げられ、装置を除去したとのことでした。

図Aが正面観です。顎正中部に隙間があり、ハの字に開いたように中切歯が唇側(前方)へ出ており図Bの下から見上げると、上下歯牙の前後的ずれが14㎜もありました。

図C(右側面観)、図D(左側面観)では両側とも第一小臼歯(真ん中から数えて4番目の歯)を抜歯した後のスペースが残っていました。

図Eの真横からのアップで、いかに出っ歯の様相かおわかり頂けると思います。
誰の目にも治療が終了したといえるはずもなく、隙間があちこちにあり、出っ歯で咬み合わせが深い過蓋咬合の状態でもありました。

図F(上顎咬合面観)は歯列弓の形態がV字型で理想からは程遠く、図G(下顎咬合面観)は叢生で咬合平面が大きく乱れておりスピーカーブ、モンソンカーブが非常に強く、偏心運動時の咬合干渉があらゆる箇所で生じていました。

問題点だらけに加えて、固定源のロスにより抜歯スペースがあまり残っていないことは、上顎前突の治療難易度を非常に高くしています。

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カウンセリング、コンサルには多くの時間をかけました。ずっと泣いておられました。現状をお話するのはとてもつらいことでしたが、まずは、事実は事実として認識して頂き、時間は要しますがリカバリーできることを丁寧にお話し、前向きな気持ちになって頂きたかったです。

今回は掲載していませんが、側貌レントゲン(セファロ)やパノラマから、上下顎骨の上下的、左右的な問題点をピックアップし、プラニングを決定しました。

見えない装置を強く希望されていましたので、上顎は裏側から、下顎は表側から行いことにしました。
矯正治療は、正確な診断、綿密な治療計画が第一歩です。患者さんとしては、前歯部分の問題点にどうしても目を奪われがちですが、私たち歯科医は、現状の臼歯(奥歯)関係は?ゴールをどのように仕上げるか?という点に一番着目します。

良好な臼歯関係を獲得すれば、前歯部分は自然と良い仕上がりにできます。
では、治療経過です。

上顎については、年齢を考慮し、図HRPE(急速拡大装置)にて側方への顎骨の拡大を最初に行いました。文献的にも女性の場合、25才前後までは、正中口蓋縫合の離断が起こるといわれています。

図Iが1ヶ月後です。中切歯間(ど真ん中)にスペースができていることから、左右の口蓋骨が離断したことはわかります。

その後セットアップした模型上で作製した図JのようなCRCを利用して、舌側へブレースを装着します。

図Kレベリング(叢生の改善)を開始したところです。

一方、下顎については、図Lのように、非抜歯にて叢生を改善するため、大臼歯、側方歯群のアップライト(整直)のためのB.H.(バイヘリックス)を装着しました。犬歯間幅径を十分拡げるために、両側犬歯舌面にリンガルボタンを装着して歯面をワイヤーがスライドするのを防いでいます。この方法は教科書には載っていませんが、非常に有効です。

図Mが3ヵ月後です。ほぼ叢生は改善されました。

図N,O、Pが治療開始3ヵ月後です。上顎は裏側から、下顎はコーティングされたホワイトワイヤーを使用することにより装置装着を他人にはほとんど気づかれない審美的な矯正治療が可能です。

図P(3ヵ月後)と図Q(術前)を比較すると、咬合が挙上され適正な上下的な前歯のずれになっていることや、中切歯の歯軸が正常に是正されていることがおわかり頂けると思います。

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前回第58回 ”リカバリー”のほとんどは難症例・・・①お話しましたが、前後的(近遠心的)な改善の前に、上下的な問題を解決しておかなければいけません。基本的なことですが、とても重要です。そのためには、治療の初期段階で上下の臼歯部関係をしっかり確立しておくことが求められます。

矯正治療を行う場合、最初に顎内、つまり上顎・下顎の各歯列内での問題点を改善していきます。歯牙、顎骨の問題を顎内でどのようにどこまで改善できるのかを治療前に計画しておき行います。

左記の左縦欄図R,T,V、Xが治療前、右縦欄の図S,U,W,Yが3ヵ月後です。たかが3ヶ月ですが、大きな変化が起きています。

上顎咬合面観の図R→図Sでは、歯列弓の形状が側方拡大されたことによりV字型から半円形の理想に近い形になっています。顎骨自体の側方への拡大は、上顎前突ケースのスペース確保には、非常に有効に活用できます。

他歯科医院にて抜歯後に残っていたスペースの閉鎖については、4ヶ月目から行いましたので、この時点ではまだ残っています。

下顎咬合面観の図T→図Uでは、臼歯部の整直により前歯部の叢生改善のスペースを確保し、レベリングがほぼ完了した状態になっています。

前歯部の下方からの拡大図である図V→図Wでは、上顎前歯部の隙間の改善、下顎歯牙の叢生改善により上下歯牙の前後的ずれが改善されてきたのがおわかり頂けると思います。

前歯部の横からの拡大である図X→図Yの変化としては、主に上下の歯軸(歯の傾き)の改善が見て取れます。上顎前歯の唇側傾斜、下顎前歯の舌側傾斜がともに改善されています。

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上記は、この症例の3ヶ月のみの経過を閲覧しました。
抜歯症例の場合、テクニックの如何に拘らず、通常大きく3つのStage(ステージ)で治療を進めていきます。

1)StageⅠ:レベリング(上下顎歯列の叢生の改善、咬合平面の平坦化)
2)StageⅡ:抜歯スペースの閉鎖
3)StageⅢ:咬合の緊密化

1)に3~6ヶ月、2)に6ヶ月、3)に6~9ヶ月が標準的な治療期間です。
1)を飛ばして3)を行うことはできませんし、1)、2)、3)を同時に行うことなどどんな名医にもできません。
Pre-stageⅠ、Post-stageⅢといった治療が必要な場合もあります。

要は、確実に順序立てて治療を行わないと、ゴールへは絶対にたどり着かないということです。テクニックの如何に拘らず、行き当たりばったりの治療などあり得ないのです。ゴールへ向けた確固たる治療プランを治療前に決定し、それに基づいて、一歩ずつ治療を進めていきます。

当医院来院時(初診時)に、すでに治療開始1年半経過していたにも拘らず、StageⅠが行われていませんでした。

上記のケースは、当クリニックでの治療開始3ヶ月でStageⅠが終了し、4ヶ月目からStageⅡに突入しました。
ちょっとボリュームが多くなってしまいましたので、治療経過の続きは次回お話します。”ロスしてしまった固定源のリカバリーをどのようにしたのか?”がこのケースの治療上の山場でした。

矯正治療は、患者さんからすれば、ほとんどのケースが審美的な改善が主目的です。治療の進行中、患者さん自身が治療が順調に進行しているか十分評価できます。術後評価もできます。歯科医自身がたどり着けるゴールを十分認識してから取り組むべき分野です。そうでなければ、歯医者不信やトラブルになってしまいます。

当クリニックでは、患者さんの要望を十分お聞きした上で、できるだけ希望に沿った治療法、そしてゴールへ導ける矯正材料やテクニックを選択するようにしています。
「患者本位」、「患者主導」の当クリニックのこのスタンスは、これからも変わることはありません。

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