第189回 日本顎咬合学会に参加
6月9日(土)、10日(日)の両日、東京国際フォーラムにて、歯科医療関係者を対象に、第30回の節目となる「日本顎咬合学会」の学術大会が開催された。歯科臨床医を中心とした会員数7800名を超える巨大な学会の学術大会である。、
そんな中、限られた時間ではあったが、会員発表の口演の機会を頂き、日々の臨床ケースを中心に、「歯のポジショニングの有効かつ効率的な改善法について」 自論を展開させて頂いた。
前日の金曜日から東京入りし、最近リニューアルした友人のクリニックを見学した後、数人の歯科医と夜中まで臨床座談で盛り上がった。
本学会の特徴として、多種多様な各分野のプログラムが組み込まれており、臨床医の一人としては実に興味深く、楽しく過ごせた2日間であった。多くの知人との交流、そして日頃からお世話になっている著明な歯科医との再会、新しい出会いもあった。
現在の歯科界は、インプラント全盛時代ではある。が、演者の端々の発言からも曲がり角に差し掛かっていることを肌で感じ取れることができた。多くの歯科医院でほころびが出てきており、リカバリーに追われる時代が刻々と近づいていることを実感した。
そして今こそ、”天然歯に勝る人工物はない!””歯の保全に最大限の努力をし、天然歯を守る・有効活用することに精力を費やすべき!”と改めて感じた。
ナソロジー学から時代の変遷とともに変化してきた顎咬合学の本流であり常に議論の的となる下顎位については、生体に寄り添い機能を邪魔しない許容される範囲での個別の形態を探ることが求められると思う。昨今は術前のCTで顎関節の3D診査ができるようになったことの意義は大きいと感じる。
あの合理主義でインプラント大国であるアメリカからの本学術大会の招待演者ですら、クエスチョナブルな残根の歯を挺出・歯周外科というある意味手間な前処置をしてから天然歯を可能な限り利用した臨床ケースをプレゼンの後半で提示していたのには驚いた。何が何でも「欠損=インプラント」ではなく、インプラントの適応を熟慮することが求められている!と結論づけていた。
歯科臨床に正解はないし、自身が行った治療成功の是非は5年、10年と経って始めて感じ取ることができる。 であるならば、審美第一主義での安易な切削や修復といった補綴は極力行わない・頼らない臨床をベースに置くことの意味は大きいと思う。まだまだテクニック論に終始する演題が目立ち若い先生に人気があると感じるのは私だけであろうか?
若い歯科医、そして歯科界はいったい何処に向かっているのだろうか?