第9回 矯正装置あれこれ(顎外矯正装置)・・・第3話
今回は、矯正装置のなかで主に乳幼児期に一番よく使用される取り外しのできる装置について、どんな種類や特徴があって どんな症例に使用されるかについて解説していきたいと思います。
取り外しのできる装置には、大きく分けて、口の外(顎外)で使用するタイプと、 口の中(顎内)に入れて使用するタイプがあります。今回は、顎外の矯正装置についてお話します。
1)顎外矯正装置 (上顎や下顎の骨の成長を促進したり、逆に抑制する時に使用します)
主に、 上の奥歯(6歳臼歯)を後ろに移動させたり、奥歯が前にくるのを防ぐ時使用します。出っ歯ぎみの人に頻用されます。頬に見える針金を、口の中の奥歯(6歳臼歯) に引っ掛け、歯を後ろへ押す力をかけます。
チンキャップ・・・
主に、下顎を後ろへ誘導したり、前方への成長を抑制する時に使用します。顎にあるパットが、ゴムの力で後上方へ引っ張られ矯正力が働きます。
ファイシャルマスク・・・
主に、上顎を前方に誘導、発育させる装置です。上顎の劣成長の患者さんに使用します。おでこと顎のパットで固定して、フック(頬からでているワイヤー)で、上顎全体を前方に牽引します。
顎外矯正装置は、10年ほど前までは好んで使用する矯正医が多かったのですが、装置への安全性への疑問が取りざたされるようになってきました。
アメリカでは、ヘッドギアを装着していた患者が、就寝中ワイヤーがはずれて目に突き刺さって失明するという痛ましい事故もありました 。
上記の装置は、どれも10時間以上装着していないと効果がないものが多く、患者さんの忍耐力もかなり必要です。ただ、使用時間を守ってきっちり使ってもらうと、非常に有効な装置です。装置を使用する適齢期というのもあります。上顎と下顎の成長するピークの時期を狙って装着すると効果的です。
顎外矯正装置は、顎の骨体自体に比較的強い矯正力で作用させる場合と、弱い矯正力で歯を移動させる場合があります。上下の顎の成長のアンバランスな患者さんに、顎の骨自体に作用させれる装置としては非常に優れています。他の矯正装置では効果の出にくい症例にも効果が認められるのは、事実です。装置も改良されて安全面での配慮もかなりされています。
最近は、顎外矯正装置を、他の矯正装置と併用して、補助的な装置として使用している臨床医が、多いと思います。顎外矯正装置(特にチンキャップ)の長期使用は、顎の関節への悪影響があるといわれています。比較的弱い矯正力で、使用時期を限定して使う、というのが、主流になっています。
私の場合は、どうしても他の矯正装置と併用して装着したほうが良い場合に限って使用しています。第一選択肢としてはまず選びません。なぜなら、安全面への不安は当然ですが、上の写真を見て下さいよ。帽子をかぶったり、お面みたいのをつけたり、首の後ろにベルトがあったり、長時間つけてるの大変すぎますよね。
次回は、口の中で使用する矯正装置(顎内矯正装置)についてお話したいと思います。