第93回 遠方からの見学者
先週の休日は青森県から、先々週は茨城県からなど、遠方から歯科医や歯科衛生士の方が見学に来られることが、ここ2、3ヶ月非常に増えた。わざわざ遠方から来院されるのであるから、当クリニックで行っていることを包み隠さずお見せするようにしている。
皆全く面識のない方ばかりである。当クリニックの場合、元来、歯科関係者からのメールでの問い合わせが非常に多いのであるが、HPを見て、是非診療システムや診察風景を参考にさせてほしい、という依頼である。
年齢、出身大学、専門も多種多様な方なのだが、共通しているのは、ご自身の現状への危機感をお持ちで何とか打破したい、そして向上心、向学心をしっかり持ち合わせていることだと思う。
見学者の方が帰られていつも反省するのが、”本業である歯科医療への思いを熱く語ってしまう癖”である。
昨今、歯科業界全体としては非常に厳しい環境にあるといわれ、経営的手腕のノウハウばかりがが持てはやされる時代になってきた感があるが、本業(歯科医療)を突き詰めていく姿勢、5年、10年先を見据えて習得すべき知識、技術は何か?そのために今すべきことは?など説教っぽい話に終始してしまう自分がいる。
保険で良い医療を!という建て前で医院経営が成り立たないのは確固たる事実である。
高度な差別化された医療を提供できる歯科医院を目指す!という選択肢もあることを提示させ頂く。学術系の習得には時間がかかること、経営面で芽が出るのには、3~5年くらいのタイムラグが生じることもお話させて頂く。
当クリニックの場合、診療台の数や医療機器が整備されたことにより、増築前に比べると、一人一人の方に十分時間をかけて診察できるようになった。数から質への転換は、良い医療を受けたい、提供したいためには避けられない変革であると感じている。
今後、MI(低浸襲での医療)とかEBM(根拠に基づいた医療)、予知性の高い医療を行うためには、「包括的医療」、「チーム医療」、そして「危機管理」など避けては通れないキーワードがある。いかに自医院で実行、実践していくか?が問われている。
模範とは言わないまでも、見学者の方に、恥ずかしくない歯科医療を行っている姿をお見せしたいし、現場(最前線)、患者さんから多くの事を学んでフィードバックし、自身の経験値を上げている側面を見て頂ければ、何かしら収穫があるのではと思う。
見学後、感想をお聞きしますと、
「また見学に来てもよろしいでしょうか?一日の見学ではわからないことが多すぎますので・・・」
「私の目指す医院に近いです。まずは知識の習得からスタートします」
「1人の開業医でここまでの総合的歯科医療ができるんですね。」
などお褒めを頂くことが多いのだが、私としては、毎日悪戦苦悩しながらの臨床である。
見学者の方には、「私自身発展途上ですし、スキル的にも人間的にも”師匠”と呼べる歯科医が各専門分野に何人かいます。定期的にコンタクトし、ご教示して頂いています。”師匠”と呼べる人を複数持ってほしい」、といつもお話します。
”師匠”は、自身と比べて遥か上の人物でないと意味がありません。一生かけても到達できないほど雲の上の存在、日本で指折り数えれる方、いやグローバルに活躍されている方であることが必須となります。
先日、当クリニックの勤務医のドクターに、
”石井先生は今が一番油が乗った時期ですね。知識、技術、体力的にもとても充実しているように思えます。やりたいことがあれば、今のうちにやってください。医院の方は何とかなると思いますよ・・・”と意味深な事を言われました。
”もちろんやりたいことはある”と即答した。”薄々スタッフは感じとっているのだろう。ハードルは高いのだが今その準備をしている。もう手が届くところまできている”と。
長期間の留守の間、しっかり任せれるドクターに各人が成長してほしいし、私への頼もしい発言が出て、本当にうれしく思った。
8月から常勤ドクターが増え、歯科医は6人体制になる。保存、補綴、外科、矯正、歯科麻酔と各人が得意とする分野で研鑽を積んでいるので、十分な力を発揮して頂きたいと思う。もちろん、統括者である私自身は、すべての分野でのレベルアップが必要不可欠であることは言うまでもない。