第25回 レントゲン写真を知ろう!・・・①
今回は、レントゲン写真について話してみたいと思います。
歯科医が口腔内の疾患の診断を下す上では欠かせない検査の一つに、エックス線写真があるのはいうまでもありません。患者さんからの問診、歯科医による視診、触診などの後、原因が疑われる部位のX線写真を撮影することによって、確定診断が下される場合が、大半です。撮影されたX線写真については、日々の臨床では、詳細に説明されているはずですが、基礎知識として患者さん側も知っておき、不明な点等は、どんどん歯科医に質問することによって、さらに理解が深まると思います。
X線写真の基本的な見方について、第1回目として、歯とその周囲組織の正常・異常について説明していきたいと思います。
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図Bは、咬合法と呼ばれる撮影法で、歯の咬む面に垂直にX線を充てることにより、主に病変、異物などが骨の中の頬側にあるか、舌側にあるかの鑑別に使用します。図Bの真ん中あたりに白い線の丸に囲まれた部分に膿みの袋(歯根嚢胞)が認められます。 図Cは、咬翼法という撮影法で、上下複数の歯を同時に撮影することができます。主に、歯と歯の間の虫歯の有無や、歯槽骨(歯を取り囲んで支えている骨)の吸収の程度の判定の際利用します。 欠点としては、歯の根の部分が撮影されませんので、歯の歯冠部の異常しか読影できません。現状ではあまり利用されない撮影法だと思います。 |
では、病変が認められる症例を見てみましょう。
図D は、矢印の部分が黒っぽく見てとれると、思います。この部分が虫歯になっています。歯の上の部分は真っ白(金属の詰め物)で、その下(歯と歯茎の境あたり)に穴が開いています。視診では見つけにくい場所で、レントゲン撮影によって確定診断がつく症例といえます。
図Eは、歯と歯の間矢印a のところに白く写った金属の詰め物が装着されています。隣在歯との接触が不良 なため、矢印bの部分が虫歯に なっており、矢印cの部分の歯槽骨が吸収しています。
図Fは、黄色矢印 の部分に根の先を中心とした黒い像が認められます。根の中の治療が不良なため感染を起こし、 根の先に膿みの袋を作っています。根の中の再治療が必要です。
図Gは、図F と同じように矢印の根の先の周囲に黒い像(透過像という)が認められ、膿みの袋(歯根嚢胞という) が存在します。
次に歯の周囲に異常ある症例です。
図Hの 黄色矢印の歯の歯槽骨はほぼ正常ですが、 図Iの歯槽骨は重度に吸収しています。 特に、歯と歯の間(分岐部という)は吸収が著しく、治療上は難症例と いえます。歯周病に罹患しています。
図Jの青矢印 の歯は、上の部分(歯冠部)が真っ黒で 大きな虫歯になっており、治療上は抜歯になる可能性が高いといえます。黄色矢印 の歯は、真横に向いています。
親不知は、 往々にしてこのような埋り方をしていて、前の歯との間の隙間が不潔域となるため、虫歯や歯肉炎になりやすい、といえます。
図Kは、黄色矢印 の部分に横に黒いラインが入っており、そこで歯が破折しています。視診ではわからない歯根部分の異常を見つけるには レントゲン写真は欠かせません。
今回は、歯のレントゲン写真の最も基本的なよくある症例についてお話しました。歯科医は、患者さんを目も前にして撮影したレントゲン写真の説明を十分にしますが、患者さんも知識として多少でも 持ち合わせていれば理解が深まるといえます。 非常に大ざっぱですが、患者さんに知っておいてほしいポイントを4つ挙げますと、 黒い線が入っていれば破折しています。 ②歯髄部分(歯の中の中心部)が白い(不透過像)場合、人工物で充たされており、 根の先 まで詰まっていなければいけません。 ③歯の周囲の透過像は病変です。(根の先の周囲に頻繁に見受けられます。) ④歯槽骨が吸収(透過像に置き換わっている)していると、歯周病に罹患しています。 |
歯の病変は、上記に挙げた例の他にも多種多様な像を呈します。エックス線検査は、疑われる疾患に対して実際にどのような状態であるかを判定することにあります。治療後の効果を判定する際にも非常に役立ちます。 |
次回以降に、歯の周囲の顎の骨の異常が疑われる場合に撮影するエックス線写真についてお話できればと思っています。 |