第92回 石井歯科医院探索!~⑪型どり<その②>~
前回に続いて、歯型をとる時に使う材料や道具をご紹介します。
さて、これは何でしょう?赤い棒状のものがたくさん入っていますね。
これはユーティリティーワックスといって、トレーの形を修正するものです。
石膏模型を作製する時や、技工をする時に重宝する材料です。
例えば、既製のトレーでは長さが足りない時など、このようにユーティリティーワックスをトレーにくっつけて形を修正します。
工作をしているようですね(^^)
でも型どりで一番重要なのは、口の中の形とトレーができるだけ合った状態にすることなんです。
ユーティリティーワックスには印象材がくっつきにくいので、修正した部分には専用の接着剤を塗っておきます。
お口の中の一番外側(外形という)をいかにきれいにとるかが、腕の見せ所です。
入れ歯を作製する時は特に大切です。
こちらのトレーは個人トレーといいます。入れ歯を作る時は2回歯型をとります。、1回目は既成のトレーでおおまかな型どりをして、その模型を使って個人トレーを作製し、2回目に個人トレーで精密な歯型をとります。個人トレーは、患者さんの口や歯の大きさに合わせた、いわゆるオーダーメイドのトレーで、実は院長が作製しています。
これはシリコン印象材のパテタイプという材料で、より精密な型をとるときに、後で紹介するインジェクションタイプと一緒に使います。
2種類のゴムのような材料を、練り合わせると3~5分で固まります。
このパテタイプもとても診療室、技工室で、よく使う材料です。
入れ歯の修理の時にとっても便利です。当院では、このパテを使って、30分位で壊れた入れ歯を治しちゃいます。(^^)v
では、どのように使うかご紹介します。2種類のパテを同量用意します。さわり心地は粘土のようです。
臭いは、ちょっと”ツーン”とくる感じです。
ある患者さんに、”ブランデーの臭いだ”と言われたことがあります。
シリコン印象材は水を使用しません。
手で2種類のパテを練っていきます。
グローブの種類によっては、パテの硬化を遅らせてしまうので要注意です。
まずは指先でおおまかに練りあわせます。練り始めたら手早くしなければいけません。
結構、指先に力が必要です。
続いて、手の平で手早く練っていきます。
黄色と青のパテがマーブル状だと均一に練和されていません。
手早く!力強く!が基本です。
均一な色になったらできあがりです。
約30~40秒で練り上げます。
ここで裏ワザを一つご紹介します。
多数の歯の型どりを同時に行わなければいけない時は、硬化を遅らせる為に氷水の中で練ります。
あとはトレーに盛りつけて、アルジネート印象材と同様の使い方をしますが、アルジネート印象材に比べると硬く、おさえる時とはずすときに少し力が必要です。
こちらがシリコン印象材のインジェクションタイプです。先程のパテタイプとセットで使用しますが、寒天印象材のかわりに使います。
寒天に比べて、ちぎれにくく、変形しにくいのがポイントです。寸法変化も小さいので精度のよい模型が出来上がります。
インジェクションタイプも2種類あり、チューブから同量出しておきます。
インジェクションタイプより少し硬く、流動性がないレギュラータイプというのもあります。入れ歯の型どりの時によく使用します。
専用のスパチュラを使って均一に混ぜ合わせます。
この間別のスタッフが同時進行でパテタイプを練っています。
練った印象材の中に気泡が入らないよう、練板に押しつけながら伸ばすようにします。
”この印象材の練り方を見たら、そのスタッフの経験値、センスがすぐわかるんだよ”と院長が言っていました。
混ざったら1か所にまとめます。
もったいない(結構高い材料です・・・)ので、残さないよう集めます。
きあがったものをシリコン印象材専用のプラスチックのシリンジに入れます。
面白そうですよね~。やってみたくなりませんか?
診療室の裏側では、型をとる前に、細かな準備、作業をしているんですよ。
あとはアルジネート印象材と、寒天印象材の時と同様、歯型をとりたい部分にインジェクションを流し、パテでおさえるというわけです。
2回にわたり、患者さんがなかなか見ることのない型どりの作業の様子をご紹介しました。改めて見てみるとなかなかおもしろいですよね。ここで型どりの時のアドバイス!!型どりの時の5カ条をご紹介します。
1つ、舌の力を抜くべし。 1つ、つばを飲み込むのを我慢するべし。 1つ、鼻で息をするべし。 1つ、前かがみになるべじ。 1つ、他の事を考えるべし。以上この5カ条を頭に入れて型どりに挑んでみてください。きっとあの苦しい型どりが少し楽になると思います。 |