第123回 豚顎実習・・・ODCサブ例会
昨々日は、”2011年度第8回ODC例会”にて会員発表が行われた。タイトルは以下の通りでした。
1)インプラント治療(上顎全歯欠損ケース、前歯単独歯ケース)の考察
2)7~7補綴ケースから学んだこと
3)MTMケース数例への反省・考察
同業の歯科医が行った症例発表からは実に多くの学びがあります。振り返ると、必ず診査・診断の甘さに気づき、治療計画の重要性を痛感します。随所に工夫が見られた興味深いケースばかりでした。少人数のカンファレンスだからこそ活発なディスカッションができ、厳しい指摘や批評から得ることも多いです。
また、昨日はODCサブ例会にて約20名の参加者とともに豚顎を使用して”歯周外科におけるフラップマネージメントのポイント”と題した講義と実習を私が担当して行いました。フラップマネージメント(歯肉弁の扱い)は、歯周病が中程度以上進行したケースやインプラント治療において必ず習得しておかなければテクニックである。病態やゴール設定に応じて術式を選択し、切開・剥離・縫合を使い分けることになります。
午後は、各種外科療法を”豚顎”を使用してトレーニングしました。歯科医対象の外科の模擬実習では、豚の顎骨(下顎)を利用するのが定番です。いつも懇意にしている畜産業者から取り寄せました。ご協力頂き感謝です。
また、いつも会場の提供及び準備に奔走して頂いているT歯科商店の方々には本当にお世話になっています。有難うございます。
外科処置に際しては、歯肉の性状、形態を診査した上で、ボーンサウンディングにより歯槽骨の3次元的形態をイメージすることがとても大切です。
歯周環境の改善(歯周ポケット、アタッチメントレベルの正常化)が主目的の場合が大半ですので、ポケット除去や付着獲得のために何をすべきか?思考する癖を日常から磨いておきたいものです。
次に骨欠損エリアを避けた切開線を設定します。特に歯間乳頭部の歯肉を飛ばさないよう細心の注意が必要となります。剥離においても、フラップ(歯肉弁)をどこに(歯冠側、根尖側、元の位置)最終的に位置づけるか?によって全層・部分層・コンビネーションを使い分けます。減張切開の手法もいくつかあります。
考案されているさまざまな手法のメリット・デメリットをデモを通じて教示させて頂きました。今後歯周外科の中心になる”再生療法”を行う際のメンブレンの扱いや骨補填剤(自家骨)の採得法についてもシンプルかつ確実な方法を私なりに解説しました。
そして、縫合においても、原理原則を押さえつつ、バリエーション豊かな発想をもつことにより適材適所で各種縫合法を使い分けるすべが身に付きます。
使いやすいインストュルメントについても紹介させて頂きました。繊細な処置に必須な”マイクロ用外科キット”も必需品です。美しい仕上がりも目指したいところです。
いずれにしても、外科手技の習得には反復トレーニングしかありません。そして臨床経験を積むことにより精度が上がります。
丁寧な手技、”きれいなオペを心掛けること”、そのためには、”各ステップでこだわってほしい”ことを講義・実習の中で強調しました。スピードを追求することはあまり意味のあることとは思っていません。
早さを追求すると往々にして雑なオペになりがちです。特に若いドクターには、トレンドを追いかける前に、ベーシックなスキルのクオリティーを追及してほしいものです。
ODC会員は、毎月の例会やほぼ隔月に行う実習メインのサブ例会を通じて、確実にスキルアップしていると感じています。今後もさまざまな分野をオールラウンドに習得できスキルアップしていけるプログラムを組み込んでいきたいと考えています。
当日は、”夏祭り岡山”ということで、快晴ということも相まって岡山市中心部はとても賑わっていたことと思います。そんな中、休日返上で参加された歯科医の方々、”豚顎と格闘した一日”は、必ずや今日からの診療に役立つことと確信しております。
学術に対してひたむきに向き合い、常に向上心を持って学習することは、私たち医療従事者全員が一生涯を通じて肝に銘じて行動することが求められます。
知らなかったことを知れた時の喜び、出来なかったことが出来るようになった時の喜び、そして自身も納得した良質な歯科医療が提供できた先に患者さんから感謝されることが、”理想の歯科医像・歯科医道”と考えます。