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第16回 MTMと補綴を組み合わせた審美治療

今回は、最近当医院に来院された患者さんで、MTMと補綴を組み合わせて審美的に満足のいく結果を 得られた症例について解説したいと思います。
MTMの詳細については、院長からのメッセージ(第15回をご覧下さい。

左の患者さんは、上の前歯の歯並びをきれいにしてほしいことを主訴に来院されました。

 歯並びをよくするには、歯を移動してきれいにする矯正と、被せや、入れ歯で補綴的にする方法があります。

 問診の結果、半年以内という治療期間で上の歯並びだけきれいしてほしいということになりました。治療をする上で、 一番の問題は、左図(1)のように、 顔の真ん中(正中)と、歯の真ん中が、大きくずれている という点です。

 このような場合に、左へずれている歯を右へ移動(MTM)させてから、補綴処置を施すと審美的に非常に満足のいく 仕上がりになります。

 左図(2)のように、ゴムを利用して、右上の2本の歯だけを右へ動かします。約3ヶ月で移動しました。

 その後は、通常の補綴処置にて左図(3)のように 被せを作製しました。

 この症例の場合、もしMTMをせずに補綴処置をしていれば顔と歯の正中がずれたままで、到底患者さんの満足は得られなかったと思います。

 MTMせずに、正中を一致させようとすれば、 左へずれている歯2本抜歯するしかありません。

患者の要望により、下の前歯の歯列不正は特に処置しませんでしたが、半年もあれば歯を移動する矯正で、 十分治療可能であったことを付け加えておきます。

図4をご覧下さい。顔面の正中と、上下の前歯の正中が一致しているので、審美的には問題のない結果といえます。

この患者さんの治療期間は、初診からMTMも含めて4ヶ月でした。

現在、歯周病治療を継続的に行っており、図2と図3を 比べると改善傾向が、著明に認められることがわかって頂けると思います。

上記の症例は、半年という限定された治療期間でも、MTMは、十分活用できるという一例です。

 前回、お話しましたように、MTMを行うことにより、歯への浸襲(削る、神経をとる、抜歯等)は、 最低限で済むことが多々あります。

 1本、2本の歯を動かすMTMの技術を持っていれば、診療の幅が大きく広がることは間違いありません。 

補綴物をより良い状態で作成したり、機能していない歯を噛みあわせに 参加させたりすることもできます。

患者さんにとって、治療方法の選択肢が広がることは言うまでもありません。

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