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第34回 かかりつけ医が行うべき症例(正中離開)・・・③のⅠ

今回は、日々の診療中、非常に出くわす頻度の高い「正中離開(俗に”すきっ歯”といわれている)」への治療法の私見を述べたいと思います。

 「正中離開」と一言にいっても、正中離開している歯の状態、周囲の歯牙の状況、上下のかみ合わせの問題、年齢などにより対処法を変えなければいけません。

 上顎の中切歯(真ん中の歯)2本が生え揃うのは、通常6,7才です。この時期に正中離開の治療をしたほうが良いか、それとも自然に治癒するタイプなので経過観察して良いかの判断は、歯科医の知識によるところが大きいです。

 下記に典型的な症例を提示し、経過を追って説明したいと思います。また、成人の正中離開の治療時の注意点、工夫するべき点もお話したいと思います。

症例1

図A、B、Cが、初診時の状態です。7才の男の子で主訴は、”正中離開”と”下顎の叢生”です。図B(咬合面観という)は、下から上の歯列全体を撮っています。

上顎中切歯(真ん中の2本の歯)の間に1.5㎜程度の隙間が開いています。両隣りの側切歯は、まだ未萌出で乳歯です。

 現在の図A、B、Cの状況から後続永久歯の側切歯が生えてくれば、中切歯を左右から押すので、正中離開が自然治癒する、ともし診断をつけたならば、大きな誤診です。上顎の4前歯だけ診るのではなく、歯列全体、対合歯、そして咬合関係も非常に重要です。診断を下す際は、多角的に状況を把握する必要があります。

 まず、現在の中切歯の位置が適正であるか否かです。上顎歯列は現状は尖型で、理想的な半円型には程遠いです。中切歯が前方にありすぎるのか、歯列の幅径が狭すぎるか、または、その両方です。若干”開咬”ぎみで、図CからOver jet(上下の前歯の前後的なずれ) が大きいこと、掲載はしていませんが、側貌は問題ない(セファロより)ので、下顎は後退していない、ということは、中切歯の位置が唇側にありすぎることになります。

A

B

C

治療としては、上顎中切歯を口蓋(後方)へ押します。すきっ歯は治癒しますが、後続永久歯のスペース不足は明らかですので、図Dのように側方拡大(左右へ拡げる)を並行して行います。
 図E、Fが治療開始2ヶ月です。正中離開が改善されつつあり、図C図Fを比べると、Over jetも小さくなってきました。
 図G2個目の側方拡大装置です。図Dとは異なり、扇状に前歯部分を拡げて、歯列弓を尖型から半円型にする装置です。

D

E

F

G

咬合、つまり下の歯列の状況の把握も重要です。今回のテーマは、正中離開ですので、上の歯のすきっ歯の話に終始しますが、このケースの場合、下顎の叢生に対しても拡大装置を入れています。上顎の拡大量は、下顎のスペース不足量によって規定されます。
 下顎を拡大することには、実は、賛否両論あります。その辺りのことについては、別の機会にお話します。

 図H、I、Jが、治療開始6ヶ月後の経過観察期間に入った現在の状態です。図C図Hを比べると、Over jet は改善され、図Jのように上顎歯列弓は半円型の理想的な形態となりました。

H

I

J

”装置を使用して歯がきれいに並べば治療は終わりか”、といえば、決してそんなことはありません。
 考察しなければいけない点がいくつかあります。図Cをご覧ください。何かお気づきの点はありませんか?スキルのある歯科医ならすぐ気がつくはずです。
舌を前歯の裏側に押し付けています。咬舌癖、舌を前突させるといった悪習癖があります。幼児期の舌癖は、治療上非常に重要な要素になります。舌癖のため、上顎前歯が唇側へ出て、正中離開になっていたのです。開咬ぎみになっていたのもそのためです。歯性の上顎前突に分類されます。症例的には、骨格に異常がない分易しいのですが、今後、Over bite(上下前歯の上下的なずれ) を大きくする咀嚼訓練が必須といえます。

 もし、骨格的な異常を伴った上顎前突の場合は、床装置の適応外ということになります。床装置は、一方向への傾斜移動しかできません。ワイヤーによる矯正治療が必要です。また、上下の咬合関係の異常が重複して起こっている場合は、この年齢の場合は、機能的装置(例えば、バイオネーター、ビムラー、フレンケル・・・)などの適応になります。
 正中離開だけを取り上げての治療というより、正中離開になってしまった周囲の状況を把握すること、他の歯列不正と重複していないか、咬合関係や骨格的な異常の有無などを総合的に診査した上で、治療方針、治療計画を立てる必要があります。

 また、幼児期の早期治療の場合、家族暦レントゲン(セファロ、PA、パノラマ等)から成長予測を立案し、成長のピークを利用した顎骨のコントロールも治療上は非常に有効になってきます。顎骨の成長方向、上下顎骨の成長時期のずれも考慮する必要があります。
 幼児期の場合は、メカニカルな治療と、生物学的機能療法は、車の両輪です。

 矯正治療時、歯科医はどうしても、歯の動きばかりに目を奪われがちになります。  低年齢児ほど、食事の環境、悪習癖の除去、咀嚼訓練等に治療の主眼を置きます。 歯を装置で動かすことだけが矯正治療ではありません。かかりつけ医として、各種機能療法(MFT)のノウハウについては、知っておく必要があります。当医院で行っている悪習癖診査法や、MFTの実際については、別の機会でお話させて頂きます。

1ページのボリュームが多すぎるとのご意見が最近ありますので、別のパターンの正中離開については次回お話します。
 予告として、術前の口腔内写真(K、L、M)だけを下図に掲載しておきます。近日治療経過を説明させて頂きます。
 このまま経過観察しますか?自然治癒と思いますか?
 いつ、どんな治療を開始しますか?

K

L

M

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