第8回 矯正装置あれこれ(ブラケット・ワイヤー)・・・第2話
今回は、矯正装置のなかでも、一番よく使用されるマルチブラケット装置(ブラケットとワイヤーを使用する)には、どんな材料があって、それぞれいかなる特徴があるのか解説していきたいと思います。
歯につけるボタンのようなポッチをブラケットといいます。
材料から分類すると、大きく3種類あります。
1)メタル(金属)・・・一番一般的で、よく使用されます。安価で、ワイヤーのスロット(ブラケット「下図A」についている溝)のすべりがいいので、比較的弱い力で歯が移動します。
欠点は、審美的に銀色なので、装置が目立つことです。
2)プラスチック・・・ 審美的には、白色なので良好で、セラミックより安価です。
スロットのすべりが悪い(摩擦抵抗が大きい)ので、歯の移動にメタルよりも強い力が必要で、移動にも時間がかかります。
長期間使用していると、変色するのも欠点です。
3)セラミック・・・・審美的には良好ですが、硬いが、脆い材料なので、ウィング(ブラケットと「下図B」 ワイヤーを結紮するときに引っ掛ける部分)が、欠けることがあります。
材料としては、3種類の中で一番高価ですが、変色しないので、成人の方に頻用されています。
プラスチックと同様スロットのすべりが悪いのが欠点です。
大きくは、この3種類ですが、プラスチックブラケットのスロット部分をメタルにしてすべりを良くして審美的にも まずまずという商品(下図C)も出回っています。
メタル(金属)ブラケットの唯一、最大の欠点は、装置の審美性の悪さですが、最近は、下記のような舌側へ装置をつける方法も一般的な治療になってきました。
舌側矯正の欠点もいくつかありますが、「見えない装置」のため、選択肢の一つではあります。
ブラケットを歯に付ける面とスロット(溝)の縦、横、高さ、は、全て90°ですが、歯種によって大きさは、何種類か用意されています。一昔前までは、このブラケットしかなかったため、歯の各部位による微妙な凹凸は、ワイヤーを曲げて調整していたので、歯医者のテクニックや時間的にも手間がかかることや、複雑な装置になるため口の中の手入れも大変でした。
開発者の名前から、ロス、リケッツ、アレキサンダーなど 数種のブラケットがあり、スロットの縦、横、高さに90°ではなく、微妙に角度をつけてあり、まっすぐなワイヤーをスロットに入れておけば、各歯に微妙な凹凸がついて歯が並んでいく、というブラケットで、現在矯正を行う歯医者のほとんどが、このタイプのブラケットを使用しています。
ストレートアーチワイヤー用ブラケットの変形、改良型ともいうべきブラケットで、歯の移動が早く、しかも弱い力で行えるため、歯の移動時の患者さんの痛み、違和感がほとんどありません。メカニズムについてはさらに専門的になりますので省きますが、一番進化した”旬”のブラケットといえるのではないでしょうか。
次に、ブラケットのスロットに入るワイヤーについてですが、ステンレススチール製(銀色)が安価で、すべりも良いので主流なのですが、最近は、レモン色、ゴールド色、また、白色のワイヤーまでも発売されており、目立たなくなってきました。(図G参照)
ワイヤーをブラケットに留めるゴム(結紮ゴム)も、透明なものから、逆に目立つように、ピンク(図H)や、みどり、青色(図I)のものまでさまざま出回っています。矯正治療をしていることをファッションの一部のように楽しんでいる若い人もいます。
G:上顎はゴールド色
下顎はレモン色
H:ピンク色の結紮ゴム
I:みどり、青色の
結紮ゴム
ブラケットの種類は、主に、次のような用件によって歯科医と患者さんの相談の上決定されます。
1)審美性・・・患者の要望により、メタルか、それ以外か?
2)値段・・・・・審美性を求めると高価(セラミック)になる。
3)使用するテクニック・・・スタンダードエッジワイズ、ストレートワイヤー、ティップエッジ、舌側矯正等。
ワイヤーの材質については、ステンレスしか、前述しませんでしたが、治療の初期段階で、形状記憶合金(ニッケルとチタンの合金で通称NiTiという)や、ステンレスとNiTiとの中間のような性状のワイヤーも頻用されますが、大差はなく、色的には、コーティングした金、レモン、白などがあります。
ブラケットとワイヤーの選択には、歯科医が矯正治療を行う上でのテクニカル的な要素が関わってきますので、患者さんにはわかりにくい部分だと思います。ですから、患者さんとしては、ご自身の要望をしっかりと話して、どんな装置が入るのか、どうしてその装置になるのかを十分説明してもらって治療を始めることが大事だと思います。