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第36回 骨のないところへインプラント!・・(サイナスリフト)

今回は、前回に引き続き、骨量の足りない場所へインプラント(人工歯根)を埋入するために行う”補助的な外科処置”の話をしたいと、思います。

 上顎の奥歯へのインプラントの埋入は、骨量が不足している場合がほとんどです。上顎洞との兼ね合いがあります。(詳細については、前回の院長からのメッセージ第35回<骨のないところへのインプラント!・・・(ソケットリフト)>をご覧ください。)

 ”サイナス”とは、上顎洞のことです。口腔の上方、鼻腔の横にある上顎洞を、側壁からのアプローチによって、上顎洞粘膜を上方へ押し上げ、できた空洞へ補填材を填塞し骨の造成を行い、長いインプラント体を埋入できるようにする処置を”サイナスリフト”、といいます。

 サイナスリフトは、前回お話した”ソケットリフト”に比べると、大量の骨の造成を行えるので、必要十分な長さ、太さのインプラントの埋入が可能になります。

 ただし、術者には、高度なテクニックが必要で、外傷が大きいことや、挙上した場所への移植材の問題などから、10年前には、入院下で、大病院の口腔外科でしか行われていなかったのですが、最近では、少しずつではありますが、知識はもちろんのこと、習熟した技術をもった開業医であれば、外来で行うことが可能になってきました。

 移植材(自家骨・他家骨・人工骨・PRP等)、器機の進歩が大きく、術式もほぼ確立されてきて、術後感染の危険も非常に疎になってきたので、十分なトレーニングを積んだ歯科医の間では、治療の選択肢のひとつになっています。

 当医院でも、治療の一法として取り入れていますので、最近当医院で行った症例で話をしてみたいと思います。

症例

上顎洞の3次元的な形態を術前に十分把握しておく必要があります。
  埋入予定の場所の口腔から上顎洞までの距離や骨幅の診査には、パノラマレントゲン(詳細は、院長からのメッセージの第26回<レントゲン写真を知ろう!・・・②>をご覧ください)だけでは不十分ですので、
CTMRI断層撮影を行います(図A~D)。

  図A~Dの緑、黄色、ピンク、赤が埋入予定場所の骨の高さで、最大で8ミリ、最小で3㎜という結果でした。最低10㎜のインプラント体の埋入が必須ですので、大量の骨の造成(GBR)が必要なため、サイナスリフトを施術することにしました。

図Eが診療室で手術前の準備をしているところです。
図Fがオペに使用する器具類、薬液、移植材等を滅菌パックに包装して並べているところです。

実際の手術法ですが、粘膜を剥離した後、図Gの黄色丸のように、右側上顎洞の側壁に相当する骨開窓部に骨溝を楕円形状に形成します。

図Hは、開窓部の骨片を持ち上げているところです。洞粘膜を傷つけないように慎重に行っています

図Iが、上顎洞粘膜が露出した状態です。洞粘膜の挙上を細心の注意で行った後、自家骨、人工骨補填材、PRP等を混合した移植材を添加しているのが図Jです。緊密に填塞した後、開窓部の骨片を元に戻します。その後、コラーゲンシートで被覆し、粘膜弁を元に位置に整位し、緊密に縫合します。

前後しますが、インプラントを埋入するホールをドリルで開けた(図L)後、トライアルピン(図M)で位置、方向、深さを確認した後、インプラント体を埋入します(図N)。図Oは、レンチでしっかりと締め付けているところです。

 インプラント体の埋入は、”サイナスリフト”と同時に行う場合と、ある程度の治癒期間(3,4ヶ月)を待ってから行う場合があります。

 サイナスリフト法の成功のポイントが幾つかあります。一番重要なのは、上顎洞の解剖学的形態を術前にいかにイメージしておくか、だと思います。隔壁の有無、部位によっては、施術自体が困難な場合がありますし、粘膜の性状によっては、剥離が困難で中止せざるを得ない場合もあります。

図Pが術後のレントゲン像です。画面上で、中央と右のインプラントを埋入しました。

 図Qの黄色のラインが、治療前の上顎洞底のラインで、緑のラインまで挙上されているのがお分かりいただけると思います。長さが12㎜以上ののインプラントを埋入する、というのが、長期安定には欠かせません。上顎の奥歯部分に関しては、サイナスリフトを行えば、ほぼ全ての患者さんにインプラント治療が可能になります。

この患者さんは、今回右側のサイナスリフトを行いましたが、左側についても後日行う予定です。下の図Rの黄色の枠の部分の拡大が、図Qになります。入れ歯に対する抵抗感が強く、全顎的なインプラント治療を行っている最中です。 

あくまで個人的な見解ですが、”サイナスリフト法”は、ソケットリフト以上に施術には、職人芸的な要素が必要であると考えます。骨の造成が大量に必要な場合には、側壁からのアプローチである”サイナスリフト法”がどうしても必要なケースは多々ありますので非常に有効な治療法であることは、確かです。インプラントの初期固定が得にくい場合は、2回めの施術でインプラント体の埋入を行う場合もあります。

 最近の上顎洞挙上術の大きな流れとしては、できるだけ患者さんに負担のかからない施術で、しかも治癒期間をいかに早くして、最終補綴物までもっていくか、という点に目が向けられています。

 ですから、第一選択としては、前回お話した患者さんへの外科的浸襲の少ない”ソケットリフト法”で骨造成が十分かどうか診断します。開発当初は、骨造成量が1~2㎜程度のごくわずかしか期待できないとされていたのですが、現在では、上顎洞内へのアプローチの専用器具である”オステオトーム”を使用した”オステオトームテクニック”により、5㎜程度の挙上が一般的になりつつあります。8㎜程度まで可能といっている歯科医もいますが、私の臨床経験からは、5㎜程度の挙上が妥当な線だと思います。.

 歯牙が欠損した場合の治療法としては、入れ歯、ブリッジ、インプラントと大きく3つの選択肢があります。それぞれ長所、短所があります。各治療法の十分な説明を受け、納得した上での治療が必要かと思います。

インプラント治療が最善、最良の治療とは限りませんが、現在では、骨の造成さえ行えば、ほとんどの部位へのインプラント治療が可能な時代に入ったといえることは、間違いありません。

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