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第35回 骨のないところへインプラント!・・・(ソケットリフト法)

インプラント(人工歯根)を利用した治療が、安全で予知性の高い治療になってきたことに異論を唱える歯科医はいないでしょう。

 但し、どんな治療にも言えることですが、十分な知識に裏打ちされた正しい診断の下、習熟した技術を持ち合わせた上での治療が必要であることは言うまでもありません。

 本来、歯根は、周囲の骨(歯槽骨)によって支えられています。虫歯や歯周病が原因で歯牙が脱落または、抜歯を余儀なくされた欠損部へインプラント治療を行うのですから、多かれ少なかれ歯槽骨は吸収しています。

  骨が十分あるところへ、太く長いインプラントを埋入しないと、治療の成功は望めません。

 十数年前私がインプラント治療を始めた頃は、ほとんどの歯科医が、必要十分の骨があるところを探して、そこへインプラント体を埋入していました。ですから、歯槽骨が高度に吸収した場所には無理ですし、患者さんによっては、埋めれる場所がなく、インプラント治療ができない方もおられました。

 また、埋入されたインプラント体の場所に制約を受けるため、上へ作る被せ(上部構造)の位置や形が不揃いだったり、咬みあわせの問題が生じたり、顔貌との不調和などいくつもの問題を抱えていました。

 現在では、全ての症例とはいきませんが、簡単にいうと、”骨を作り、埋入したい場所へインプラント体を入れる”ことがほぼ可能になってきました。その辺りについて、考えてみたいと思います。


■症例1■

まず最初に、特殊な症例ではなく、私たち一般開業医が非常に多く遭遇する事例から話を進めていきたいと思います。

 症例1は、50代の男性で、下顎の左右奥歯(図A 黄色丸)に入れ歯ではない固定式の装置を希望して来院されました。( 図A~DのパノラマX線写真の見方の詳細については、 院長からのメッセージの第26回 <レントゲン写真を知ろう!>・・・②をご覧ください。)

 一般的には、下顎の奥歯の部分には、インプラント埋入に十分な骨量があるケースが多いです。埋入予定場所の下顎骨の幅と高さが十分あれば、上顎骨に比べ骨質も緻密なため、基本的な術式を守れば、リスクは皆無といえます。

 この患者さんも図B黄色線部の骨の高さは、左右ともに十分すぎるほどありました。

 図Cのように、インプラント体の長さと埋める方向を決定するために、術前にステント(黄色丸)と呼ばれる指示棒を口腔内に装着した状態でレントゲンを撮ります。

 図Dが左右2本ずつ、計4本のインプラント体を埋入したところ(黄色丸)です。インプラント体は、通常10~14㎜、直径4㎜前後のものを埋入します。最初にお話しましたが、上部構造、つまり上の歯との咬み合わせを考慮した位置に埋入することが、必須といえます。

 ただ、実際には、全ての患者さんが症例1のような条件の良い方ではありません。そこで、15年ほど前から、骨の幅や高さが十分でない場合に、骨の再生や造成(GBR)を行う取り組みが成されるようになり、現在では、症例に応じて、いくつかの方法が選択可能で、予知性の高いインプラント治療ができるようになってきています。

<骨のないところへのインプラント!>という本題のところへ話を進めてみます。

 開業医の中には、上顎のインプラント治療はやらない、という歯科医がいます。上顎洞があるから、というのが理由です。

上顎洞というのは、 鼻腔の隣、図E黄色丸 の部分にある空洞で左右にあります。

 拡大したのが図F です。上顎の奥歯の上方にあり、蓄膿になると膿が溜まる場所です。

E

F

上顎洞は、奥歯の歯根と非常に近接しており、上顎洞に歯根が突き出ている人もいます。ですから虫歯が原因で蓄膿症(上顎洞炎)になる場合もあります。

 インプラントを埋入する際、上顎洞に突き出てしまわないような長さを選択しなければなりません。
 ところが、歯の欠損により歯槽骨は萎縮、退縮するため、10㎜以上のインプラント体を即埋入できる人は、
10~20%しかいないのが、現状です。

 そこで「骨を造る」という何らかの補助的な外科処置が必要になってきます。



■症例2■ソケットリフト法
2ヶ月前に、上顎右側臼歯部へ入れ歯ではない固定式の装置を作製してほしい、ことを主訴に当医院へ来院された70代の男性です。

 図G黄色四角の場所へのインプラント治療を行うことにしました。図H黄色四角を拡大したところです。図H黄色曲線(口腔の最上方部)から緑色曲線(上顎洞下底部)の範囲にインプラントを埋入すればいいのですが、骨量が足りませんでした。

 骨量を増やして、口腔から上顎洞底までの距離を長くする手術(上顎洞挙上術)には、大別して、ソケットリフト法サイナスリフト法というのがあります。

 少量の骨量を増やすのであれば、”ソケットリフト法”で可能ですが、大量に骨を造成したい場合は、”サイナスリフト法”の適応となります。サイナスリフト法の詳細については、次回お話したいと、思います。

 図Iが10㎜と14㎜のインプラント体を埋入したところです。図Iを拡大したのが図Jです。図J黄色丸2箇所は、上顎洞下底部の膜(シュナイダー膜という)を専用の器具で押し上げて、自家骨を埋入した部分になります。

 2~3㎜程度なら押し上げることが可能です。ただし、術前のCTやMRI画像にて十分診査し、肥厚した分厚い粘膜であったり、蓄膿の手術の既往があって、上顎洞下底部に、石灰化様物質の存在の所見がある場合などは、ソケットリフト法の適応外ということになります。シュナイダー膜のリフティング(挙上)が可能かの診断は非常に重要です。

 図Kが、術後のパノラマレントゲン写真です。理想的には、2本のインプラント間に、もう1本埋入したいところですが、上顎洞底まで4㎜しかないため、ソケットリフト法の適応ではなく、患者さんとの相談の結果、上部構造は、ブリッジで行うことにしました。

”ソケットリフト法”は、言葉が意味するように、ソケット状の小さなホールを基点に上顎洞底の挙上を行います。広範囲に挙上することはできませんし、挙上量にも制約があります。ただ、外科的浸襲がほとんどないため、術中、術後の患者さんの身体的な負担がほとんどありません。

 上顎後方部のインプラント治療は、前述しましたように、補助的な手術なしでは、10人中1人か2人しかインプラント体の埋入ができません。ソケットリフト法を行うことにより、30~40%の方にインプラント治療が行えるようになります。残りの50~60%の方は、次回お話するサイナスリフト法を行うことにより可能になります。サイナスリフト法が、比較的大きな外科的侵襲を伴うことや、高度なテクニックを必要とすることなどから、数年前にソケットリフト法が考案されました。

 あくまで私見ですが、ソケットリフト法も、非常に習熟したテクニックが必要であることは確かです。ソケットリフト用の器具は、骨質によって使い分けが必要ですし、何といっても、リフティングの際には、直視できないので指先の感触に頼るしかないため、細心の注意が必要です。職人芸的な要素もあると思います。

 患者さんの要望は多種多様です。高齢、全身疾患などの兼ね合いから欧米ではほとんど利用されていないマグネットを比較的骨量のある部位に数本インプラントと一緒に埋入してオーバーデンチャーにする、という治療計画を立てる場合もあります。

 ただ、歯の欠損に対して行える治療の一法であるインプラント治療の引き出しの一つとして、”補助手術をすれば埋入は可能です”ということを、患者さんに説明する義務はあると思います。長所だけでなく、留意点等についても、十分話すことも当然必要なことです。

治療法の選択肢を多く提示することは、私たち専門家の務めと考えています。

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