ページトップへ戻る

第20回 よくある歯列不正ですね!(下顎前突)・・・④

 歯列不正は、ある日突然現れる病態ではありません。最初に歯並びの異常に気が付くのは、親御さんの場合がほとんどです。 歯列不正に気が付いた時が、治療の開始時期です。詳細については、歯並びのページの 第2回「矯正治療はいつ始めるの」・・・① 、 第3回「矯正治療はいつ始めるの」・・・②をご覧ください。

 歯並びのきれいな人と、そうでない人の違いはどこにあるのか?
一言でいえば、歯1本1本の大きさや形は、十人十色ですので、生えてきた歯が全部並ぶだけの顎の大きさがあれば叢生(乱杭歯)になりませんし、上下の顎の大きさのアンバランスや、上下的、前後的、左右的な位置のずれがなければ、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)開咬(前歯がかみ合っていない)にはなりません。

今回は、下顎前突(受け口)について、早期治療の必要性について症例を挙げて説明したいと思います。下顎前突には、大きく分けて2つのタイプがあります。

①奥歯の噛みあわせは正常で、前歯だけが反対咬合になっている
②前歯も奥歯の噛みあわせも反対咬合で、下顎自体が前方に出ていたり前方へ過成長している


 下顎前突とは、一般に上の前歯に比べ、下の前歯の方が前方にある場合を言います。当然、パッと見が受け口ですので、親御さんを含めた家族の方が最初に気付くはずです。①の場合と②の場合で治療法は異なりますが、いずれの場合も、悪くなり始めというのがありますので、原因が悪習癖にある場合には特に早期治療が得策です。では、症例を見ながら話しを進めて見たいと思います。

正常な噛みあわせは、図Aのように、6才臼歯(青色の歯)が、下の歯より上の歯の方が若干後ろにあります。咬む刺激は歯を通して上顎の骨に伝わります。

  下顎前突の場合は、この刺激がないために上顎が発育しません。貧相な顔になります。

 図Bのように上顎骨が萎縮したままだと、下顎骨が前へ出てしまいます。下の6才臼歯も前方へ出てしまいます。上顎骨にとってもよい顔をつくるには、早期の治療が大切です。
 
 
 
 
 
 
a38
b30
1393
治療間

2247
治療中
3185
治療後
上の歯が2本反対咬合(受け口)で、生えてきました。この時期の奥歯の噛みあわせは、正常です。乳幼児期の反対咬合は、大半が上顎の劣成長から生じます。この噛みあわせを放置すると、下顎の前方への成長を抑制する被蓋(前歯の噛みあわせ)がないので、下顎が過成長をして図BのようなⅢ級の噛みあわせになります。

症例1の場合は、図Cのような拡大ネジ付きの装置により、上の前歯2本を前方へ誘導しました。図Dが前方へ移動したところです。この程度の反対咬合は2~3ヶ月で治癒します。

反対咬合のままだと、左右への顎の運動ができません。機能障害の状態です。上顎骨の発育ができません。それは、顔貌の萎縮を意味します。装置による歯の移動の後、咀嚼訓練を行うことにより、咬合が安定し、前歯のかみあわせが深くなります。
c17
d14
図Eが治療前、図Fが治療後です。4歳の女の子です。まだ乳歯列です。たった1本の反対咬合ですが、放置すると、側方運動の制限や片咬みにより顎の変位を起こす可能性が非常に高いです。

 協力の得にくい幼児の場合は
図Gのような固定装置で中に入った歯を後ろから押す場合もあります。図C図Gは、装置としての目的は、全く同じですが、年齢協力度歯牙年齢(乳歯、永久歯の生えている状況)によって使い分けます。
e15
f12
g10
図Hは、成人の方の下顎前突です。但し、奥歯がほぼ正常ですので、図Jのような上の前歯を後ろから押すタイプの装置を使用しました。成人の場合、歯の微妙な傾斜や回転の修正のため、図Iのような歯の表からの装置も必要になります。

 
図KLが治療後です。この症例のように、前歯だけの反対咬合は、成人ではまれです。奥歯も反対咬合になっている場合は、下顎が過成長していたり、前方へ大きく移動、変位している場合が多いため、外科処置が必要な場合も少なくありません。

 下顎前突は、顎を横へ動かせないので奥歯
を上手く使えません。
早期治療が大原則ですが、最近では、骨格的な異常が顕著な症例でも外科処置せずに治療できるケースは増えつつあります。
h10
e-1
f12
k9
l12
症例4は、成人の方で、下顎骨過成長の骨格性の下顎前突です。図Mが治療前、図Nが治療中、図Oが治療後です。

 
 ここ数年、下の奥歯を後ろへ移動させたり整直させたりする術式が確立されてきましたので、一昔前までは重症の反対咬合で、抜歯が当然、と考えられていたケースでも非抜歯で行えるケースは増えています。
m9
n15
o10
下顎前突(受け口)には、歯性と骨格性、両者が混在したケースがあります。いずれの場合も、幼児期(3才~6才)頃には、下の歯や顎が出てきますので、親御さんが必ず気付くはずです。その時が治療の開始時期です。

  歯性の反対咬合は、成人になってからでも比較的簡単に治療できますが、骨格性の場合、下顎骨自体の過成長や前方への変位が起きていますので、治療が複雑で、期間も長くかかってしまいます。

  反対咬合は、
家族歴(親、兄弟などに同じ歯並びの人がいる)があると、骨格的に遺伝しやすいので要注意です。下顎前突(受け口)は、数ある歯列不正のタイプの中でも特に早期に治療を開始する必要があります。

 最近では、乳歯列の反対咬合のお子さんも時折見かけます。様子をみていてはいけません。即治療を開始しましょう。