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第19回 よくある歯列不正ですね!(上顎前突)・・・③

 歯列不正は、ある日突然現れる病態ではありません。最初に歯並びの異常に気が付くのは親御さんの場合がほとんどです。

  歯列不正に気が付いた時が、治療の開始時期です。詳細については、歯並びのページの 第2回「矯正治療はいつ始めるの」・・・① 、 第3回「矯正治療はいつ始めるの」・・・②をご覧ください。
 

 歯並びのきれいな人と、そうでない人の違いはどこにあるのか?

 一言でいえば、歯1本1本の大きさや形は、十人十色ですので、生えてきた歯が全部並ぶだけの顎の大きさがあれば叢生(乱杭歯)になりませんし、上下の顎の大きさのアンバランスや、上下的、前後的、左右的な位置のずれがなければ、上顎前突(出っ歯)下顎前突(受け口)開咬(前歯がかみ合っていない)にはなりません。

 今回は、上顎前突(出っ歯)について、早期治療の必要性について症例を挙げて説明したいと思います。上顎前突には大きく分けて2つのタイプがあります。

①奥歯の噛み合せは正常で、前歯だけが前方へ出ている
②下顎が後方へ位置している、又は前方への発育が不十分なため上の歯が出ているように見える


 上顎前突とは、一般に上の歯の先と、下の歯の先の前後的な位置のずれが、5㎜以上ある場合を言います。当然、パッと見が出っ歯ですので、親御さんを含めた家族の方が最初に気付くはずです。

  ①の場合と②の場合で治療法は異なりますが、いずれの場合も、悪くなり始めというのがありますので、原因が悪習癖にある場合には特に早期治療が得策です。では、症例を見ながら話しを進めて見たいと思います。
 
症例1は、当医院に8才で来院した女の子です。図Aが右側面、図Bが正面です。奥歯のかみ合わせは正常で単純に前歯だけが出ているケースです。図Aを見れば、だれでも出っ歯と気付くはずです。

 
放置すると、上顎の顎自体が前方に発育するため、歯だけの問題ではなくなってしまいます。発達しすぎた顎を元に戻すには、外科的に切除するしかないので大変です。


 治療としては、上顎の歯を後方に誘導すれば、簡単に治療は終了します。
図C図Dのような側方への若干の拡大と同時に前歯の表側につけたワイヤー(唇側線)で前歯を後方に押します。

 図E
は、側方拡大と前歯の後方移動が終わったところです。



f11
治療前           A
g9
c16
治療中          C
d13
e14
図F図Gは治療後です。このケースの場合、「なぜ、歯が出た」かが問題です。問題を解決しなければ歯は、元に戻ります。

 口に作用する機能と習慣を正す必要があります。舌圧が高いのか、唇の力が弱いのかが、考えられます。

 図HIのようにクリップを挟む訓練を指示しました。また、上顎前突の人は、前歯の機能がありません。ですから、治療後に、前歯を使って、咬む刺激を上顎に伝えて、骨の発育を促す必要があります。前咬みの訓練が重要です。
f11
治療後 F
g9
h9
i10
j8
治療前 J
k8
l10
治療後 L
m7
n9
治療に使用した装置   N
o9

症例2は、下顎が後退して出っ歯に見えるケースです。顎の関節の位置も後退しています。顎の関節は13歳前後で発育を完成しますので、これ以前に治療を完了しなければ骨格までは治療できません。

  図J
は治療前の側貌です。唇が前にでていて緊張しています。図Kのように、前歯が前後的に10㎜以上ずれています。図Nの装置(バイオネーターといいます)で下顎が前方に誘導されるようにしました。

  図O
は口腔内に装着したところです。6ヶ月の装着で、図LMのように改善されました。
 この患者さんのように、下顎が後退した症例は、治療中から前咬みの訓練が非常に重要です。治療終了後も
前歯での咀嚼訓練をしないと後戻りが起こります

 上顎前突には、前述しましたように大きく2つのタイプがありますが、いずれの場合も治療の時期が遅れると、骨格の異常を伴うようになります。骨格の異常(過成長、変形等)は、外科処置が必要なため、患者さんにとっては、大きな負担となります。

 歯の個々の大きさはどんな名医でも変えることができません。歯が並ぶ顎の大きさ、成長方向、上下の顎の位置関係(顎位)に異常が認められる場合、正しいレールの上を走るように、軌道修正してあげれば良いのです。「なぜ前歯が出っ歯になったか」、この問題を解決しておくことも重要です。咬む刺激が骨の発育を促します。

次回は、欧米人に比べ日本人に多い反対咬合について症例をあげながら話してみたいと思います。