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第17回 よくある歯列不正ですね!・・・①

 歯列不正は、ある日突然現れる病態ではありません。最初に歯並びの異常に気が付くのは、親御さんの場合がほとんどです。歯列不正に気が付いた時が治療の開始時期です。

  詳細については、歯並びのページの第2回「矯正治療はいつ始めるの」・・・①第3回「矯正治療はいつ始めるの」・・・②をご覧ください。

 今回から何回かに分けて、よく見受けられる歯列不正を列挙し、実際の治療例や、放置すると治療が複雑化、長期化する具体例についても触れてみたいと思います。

 乳歯から永久歯に生え変わる6,7才頃から、”うちの子供の歯並びはおかしいのかな?”と思われ、歯並びの相談に来る親御さんが急に増えてきます。一般に、永久歯の生える順番は、まず下の前歯が2本生えて次にその両隣の2本と上の前歯2本がだいたい同じ時期に生えます。

 端的に言えば、上の歯2本と下の歯4本が生えた時点でおかしい歯並びの子は、将来良い歯並びにはなりません。この時期が、治療の開始時期です。”放置=悪化する”と思ってください。

 では、実際の症例を見ながら話を進めてみたいと思います。

■症例1(下顎叢生)■
図Aは、下の前歯が、ガタガタになっている叢生(乱杭歯)という歯列不正です。最近のお子さんは、10人中7,8人は、歯が重なった叢生です。図Bは、治療中(顎を横へ広げている)です。図Cは、治療後で、叢生は、改善されました。治療期間はたった2ヶ月です。

 放置することは最悪です。中学生、高校生まで放置した場合、抜歯してスペースをつくる治療になるケースがほとんどです。
 前歯に重なりがあればすでに叢生です。重度の叢生になる前に治療することが歯科医の責務と考えます。


 
 

a29
b27
c14
■症例2(正中離開)■

正中離開というのは、図Dのように左右の一番前の歯(中切歯)の間に隙間があることをいいます。図Eは、上の歯列の全体像です。

  中切歯の次に生えてくる左右の2番目の歯(
側切歯)が生える隙間が十分あるのに正中離開している場合は、側切歯が生える前に隙間を閉じなければいけません。自然に治癒することはありません。

 
図F,Gのような装置を入れ、スプリングで歯を寄せます。図H,Iが治療後です。この時期の歯の移動は、非常に弱い矯正力でしかも短い期間で治療が終われます。

  この患者さんの場合は、
1ヶ月で治癒しました。放置していても正中離開が治らないばかりか、側切歯が異常な位置に生え、その後ろの糸切り歯も不正な位置に生える、といった、悪循環になってしまいます。
h7
i8
f9
g7
h7
i8
■症例3(正中離開)■

正中離開になってしまう原因には、いくつかあります。そのひとつに”小帯異常”というのがあります。

 唇を引っ張った時にできる歯茎から唇の内側にできるスジのような健を小帯といいます。この小帯が中切歯の間まで入り込んでいる場合、
図Jのように、中切歯間に隙間ができたままになります。

 小帯異常と診断された場合、
図Kのように、中切歯間に入りこんだ小帯を切除すれば、図Lのように、隙間は自然に閉じます。矯正装置は全く不要です。

ところで、小帯異常に対する処置は、切除を行う時期が非常に重要です。図J~Lのように、前歯2本が生えた時点で施術すれば、自然に治癒しますが、中切歯の両隣の側切歯が生えてからでは遅いのです。次の症例をご覧下さい。 
j6
k7
l-1
■症例4(正中離開)■

図Mは、一見図Jと同じ正中離開のようですが、大きな違いは、図Jが前歯2本だけが永久歯なのに対し、図Mは、全て永久歯に生え変わっている点です。

 小帯異常の診断の下、
図Nのように過剰に伸びた小帯を切除しました。図Oが術後です。図Mに比べるとわずかに隙間は狭くなっていますが、離開は残ったままです。

 この患者さんは、
今後矯正装置による正中離開の治療が必要です。
m6
n6
o8

正中離開の治療は、症例3 症例4の違いのように、同じ処置をしても、時期を誤ると、 結果が異なってしまいます。いかに早期に異常か否かを診断するのが、歯科医の務めということになります。 図Mになる以前に図J の時期があったわけです。

 
図Jの時期に、かかりつけ歯科医の責務として、 放置しても良くなることはない、ことを指針できる診断力は、持っていたいものです。様子を見ることは最悪で、治療できない歯科医が治療拒否したといえます。


 今回は、「よくある歯列不正」と題して、親御さんが最初におかしいな?と気づき やすい”前歯の叢生”と”正中離開”について触れてみました。成長途上の発育期に矯正をすることは、治療期間の短縮、装置の選択肢の自由度、 非抜歯治療で行える、後戻りが起こりにくい、等利点だらけということは知っておいて下さい。 

 次回は、顎の発育異常や位置異常を伴う開咬(奥歯で噛んだ時に上下の前歯に隙間があるかみ合わせ)や上顎前突(出っ歯)の早期治療の必要性や、放置した場合の危険性についてお話しする予定です。