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第12回 治療期間を大幅に短縮できる促進矯正法

 矯正治療というと、治療期間が長い、というイメージがあります。

 実際、患者さんには、「2~3年かかりますねー」と、お話しすることが、一番多いと思います。部分的な歯の移動(MTM)を除けば、上下の歯全体を動かす場合、どうしても、早くて2年、長い場合は4年くらいかかる場合もあります。

 どうしてかといえば、歯へ強い力をかければ、歯自体は動くのですが、歯の周囲に新しい骨ができないばかりか、歯の周囲の骨が溶けたままになったり、歯根が吸収して、歯がぐらぐらになって使い物にならなくなる場合も起こり得ます。歯への適正な矯正力では、大まかに言うと、1ヶ月で最大1㎜程度しか移動さすことができません。

 骨の構造を大まかにいうと、血液循環が活発で、骨の代謝が活発な柔らかい海面骨と、海面骨の外側を覆うように代謝がほとんど行われていない硬い皮質骨(緻密骨)からできています。特に、骨の成長の終了した成人の場合、緻密骨が分厚いため、歯の移動の障害になり、歯牙移動がゆっくりしか行えないため効率を下げ、結果として治療期間が長くなる傾向があります。
 促進矯正法の中の「コルチコトミ-」という方法は、矯正の治療期間を大幅に短縮できるだけでなく、歯牙移動の範囲を増大させたり、歯牙移動による歯根吸収や、後戻りを軽減する方法として、近年急速に普及してきましたのでお話ししたいと思います。

  コルチコトミーは、10年以上も前から一部の歯科医が行ってきた方法で、術式の試行錯誤から、現在では、非常に安全性の高いものになりました。1歯単位になるように緻密骨(Cortical Bone)を一層切除する外科処置を伴いますので、患者さんへの十分なコンサルテーションが必要なのは言うまでもありません。

■術式■
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 施術部位への麻酔を行った後、歯と歯肉の境に切開を入れていき、歯肉を上方へ剥離します。この処置は、歯周病の外科的手術の時にも行う非常に一般的な方法で、歯周病に対してある程度精通した歯科医であれば日常的に行っている行為です。
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 歯肉を十分剥離したところで、歯を削る器具を使用して、低速・注水下で、縦切開を一歯ごとに行います。海面骨に達する深さまで、皮質骨を完全に切除します。歯根のやや上方へ、横方向への切除を行う歯科医もいます。歯の表側(唇側)だけでなく裏側(舌側)にも同じ切開をくわえる場合もあります。皮質骨を切除する部位、範囲が広ければ、それだけ歯の移動は早く起こります。ただ、組織への損傷と、一時的ではありますが、一本一本の歯が骨折したようなぐらぐらの状態になりますので矯正力のかけすぎには、注意を要します。
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 その後、剥離した歯肉 を元に戻して、緊密に縫合します。
 一週間前後は、サージカルパックといって、手や足に巻く包帯に相当するもので、傷口を保護しておきます。一連の施術は、歯周病外科処置と、近似しており、口腔外科処置、歯周病処置の基本を理解していれば、問題なくできます
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  コルチコトミーを施した歯牙は、非常に弱い矯正力で動きます。通常の矯正治療は、1ヶ月ごとに来院してもらい、ワイヤーの調整をするのが、一般的ですが、コルチコトミー処置をした場合、1週間間隔で来院して調整します。
■症例■
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治療前
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治療前
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治療後
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治療後
コルチコトミーは、従来から行われている顎自体を大きく外科的に切除したり、離断する方法とは全く異なります。歯周病の外科処置や、口腔外科の基本をマスターしている歯科医であれば、特別な設備、器具は全く要らず、行えます。何より外科的浸襲が最小限であることから、患者さんの負担は、格段に軽減されます。

コルチコトミーを行う主目的は、治療期間の短縮にあるのですが、症例にもよりますが、通常の動的治療期間の約1/2の時間で済みます。また、骨性強直した歯は、歯根膜を介した歯牙移動が不可能であることからコルチコトミーの適応症といえます。

 歯の移動、というよりも、周囲海綿骨と一体化したブロックに分離した動きになるので、骨の化骨形成がより強い安定をもたらすため、治療後の後戻りは、比較的起こりにくいともいえます。
 促進矯正法の一種である「コルチコトミー」は、術式の確立、安全性、患者さんの負担が少ないこと等を考慮すると、成人に対して治療期間の短縮を行う上では、欠かせない一案であることは間違いありません。