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第162回 歯科医の”ラーニングステージ”

群馬大学での腹腔鏡手術での死亡例を発端としたそれに付随するニュースが、毎日のように報道されている。真実は、今後徐々に明らかにされていくと思われるが、同じ医療分野である歯科界に当てはめてみると、似たような問題が起きてはいないのであろうか?

歯科関連の研修会に参加すると、ラーニング・ステージ(Learning Stage)という言葉がよく出てくる。卒業間もない歯科医と10年、20年と臨床力を磨いてきた歯科医とでは経験値が違うし、技術的にも差があるのは当然である。自分の立ち位置を第三者的に評価し、次のステッとして何をすべきか?考える時に使用されるワードである。
開業歯科医のほとんどがGP(一般開業医)であり、通常歯科の全ての分野を診療科目して掲げている、という前提でで言えば、歯科医療のベースである、根管治療・歯周治療・矯正治療。基本的外科処置に精通していることが、如いては質の高い治療の提供ができる、ということに異論はなかろう。

先日、卒後6年目の開業準備をしている歯科医に、次のような相談を受けた。
 歯科医A:経営の柱に自分の好きなインプラント治療を全面に出そうと考えているんです。
        どうすれば僕のニーズにあった患者さんに来てもらえるでしょうか?
     私:今は歯科治療のベースの分野を研鑽する時期だと思うよ。
歯科医Aが、本当に経営のビジネスツールとしてインプラントを考えているとするならば、とても怖いことである。

冒頭のニュースの真偽は不明であるが、一般的に腹腔鏡手術は低浸襲で体への負担が少ない患者さんに優しい治療であるとされている一方、症例によっては技術的に難しい側面があり、適応症の判断が重要との見解がある。

歯科治療においても、”簡単・早い・痛くない・安い”、といった患者さんうけがいい内容だけ情報発信し、綱渡りのような難しい手技で行って、後に問題が起きてトラブルになっては、本末転倒である。
患者さんは、「ウルトラC」の治療は私たちに望んでいない。「安全・確実」な治療法を第一選択にしてほしいにきまっている。

私たち歯科医(特にGP)においては、華やかな特殊な治療、神業的な治療ができるようになることよりも、基本的治療の精度を上げることや苦手な分野を作らないバランスのとれた臨床医になることを目指すべきではなかろうか?
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