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第152回 ODC例会・・・歯周病患者の矯正治療

昨々日(6/5)は、私が所属しているODC(Okayama Dentists Club)の例会であった。岡山大学歯学部矯正科のK先生をお招きして、3時間に及ぶレクチャーを岡山市内でして頂いた。少人数(約30名)の聴衆ならではの活発な質疑応答があり、講演後もK先生を交えて症例相談も行われ、会員の先生方は、夜な夜な充実した時間を共有できたのではないだろうか。

”歯周病患者の矯正治療”というテーマで話してほしいと私の方から事前に依頼していた。矯正専門医が行う矯正は、一般的には成長期の小児や成人の”健常者”が対象である。

ところが、私たちが日々臨床で遭遇する患者さんの多くは軽度~重度の差はあれ歯周病に罹患している方は非常に多い。

実は”歯周病患者への矯正治療”を行うには、幾つもの注意点が必要である。矯正専門医も苦手意識というかあまり拘わらなかった分野であるといえる。健常者と同じ発想、メカニクス、装置では治療することが難しいこどころか思わぬ結果を招く場合も多い。

多くのリスクファクターを抱えているという認識が前提に必要となる。矯正学の知識・スキルと同時に歯周病に精通した歯科医でないと治療に踏み切ることはできない。

今までほとんど手がつけられなかった”未開拓の分野”とも言える。岡山大学歯学部では、矯正専門医、歯周病専門医、補綴専門医の連携によるチーム医療が行われていることを事例を挙げて紹介して頂いた。
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全ての原点は、”可能な限り歯牙を温存する!”という発想にある。歯周病治療の進歩により、ひと昔前は抜歯に至っていた歯牙の保存が、さまざまな再生療法に代表される歯周外科処置を併用することにより可能になってきている。そして病的な歯牙移動を起こした歯牙を矯正により歯のポジショニングを是正することの意義は、長期的な予後の意味からとても重要である。

抜歯して安易なインプラント補綴に頼ることは、ある意味歯科医の敗北である。”1本の歯牙の保存への思い”は誰しもある、当然の感情である。そのために私たち歯科医に何ができるのか?

今後歯周病患者に対して如何に有機的に矯正治療を取り入れていくか?は、全ての臨床家が勉強していかなければいけない分野である、と切に感じた。

M先生には、矯正専門医の立場からわかりやすく歯周病患者の歯牙移動のリスクファクターやゴール設定について解説して頂いた。彼とは実は大学時代の同級生で25年以上の付き合いで、現在でも良き友人であるとともにお互い尊敬し合っている?と私は思っている。M先生、長時間に渡りご講演頂き、本当に有難うございました。

歯科臨床とは、とても悩ましいものである。基礎資料の採得→問題点の抽出に始まり、さまざまな分野からのアプローチ法をバランスよく模索し、治療計画を立案することが求められる時代である。

自身に得意分野をつくることは、自分にとって安心感を得られるのであろうが、一つの分野に特化しすぎることは、別のアプローチ法が見えないか考えもしなくなることを意味し、患者さんサイドに立てばある意味恐ろしいことなのかもしれない。

若い先生と話をする時、”何から勉強すればいいですか?と聞かれた時、必ず私は次のように答えるようにしている。

歯科臨床の4本柱である”保存・補綴・外科・矯正”のベーシックスキルを反復学習することで、始めて次のラーニングステージが見えてくるはずだよ、と。