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第104回 勝ち組!負け組!という発想への違和感

この日曜日、岡山で行われた歯科界では有名な3人の歯科医の講演の聴講に出かけた。エンド(根の治療)、歯周外科、補綴の各エキスパートによる話とあって、100人を超える盛況ぶりであった。企画して頂いた関係者の方々、本当にご苦労さまでした。

時間的な制約もあってか総論的な話に終始した感があり、”明日からの診療にすぐ活かせる内容”とは言い難く、大人数のオーディエンスの中では、本音、ポイントはなかなか話してもらえないのだろうな、という感想を持った。

その中で、少し気になる話題をされていた講師がいた。キーワードで言えば、”勝ち組!負け組!””格差社会!”といったところであろうか?アメリカの格差社会の波が日本にも押し寄せている。過当競争真っ只中の日本の歯科界で、”勝ち組になるすべ”を考え実行しなければ負け組になるであろう、という内容であった。
当クリニックに限ったことではなかろうが、毎日のように”勝ち組”になるための経営セミナー、必勝法のツール販売のDMやFAXが山のように送付、送信されてくる。

はっきり言って”うんざり”というが私の感想である。異業種、特にサービス業の手法をそのまま歯科医業に持ち込んで、院長はというと、診療はそこそこで広告塔のごとく宣伝マンとして集客(患者さんを集める)に精を出すことは、本末転倒と思う。

本来、医療というのは公共性の非常に高い職種のはずである。歯科医療を通じての社会貢献や歯科医療全体の質の高い治療の底上げに力を注ぐべきで、勝ち負けという発想にとても違和感を感じるのは私だけではないはずである。

昨日は、開業を近々に予定している後輩2人と5時間ほど話をした。2人とも激戦区での開業だけにやはり経営が軌道に乗るのか?とても不安だと口にしていた。

”10年いや20年先を見据えたビジョンを持つこと、そして絶対にぶれないこと(これが一番難しい)”が根底に必要ということをアドバイスした。それから、”住み分け”の話もした。言葉は適切ではないかもしれないが、近隣の歯科医院と同じパイ(患者さん)を争うから”勝ち組、負け組”という発想になってしまう。自医院のカラーを地域でしっかり確立すれば、患者さんの層はバッキングしないので、周囲の同業者と円満に共存できる、と話した。

事実、当クリニックでは、大幅に増改築してから約1年足らずですが、設備等規模は2倍、スタッフ数が約2.5倍になりましたが、患者さんの来院数は、リニューアル前とほぼ同じです。増患、集客と言った構想・発想は最初からありませんでした。”密度の濃い診療をしたい!総合歯科医を目指したい!”という理念を掲げていました。事実来院の患者さんにも浸透してきています。近隣の同業者の方と時折お話をすることがあるのですが、特に患者さんは減っていないし迷惑はかかっていない、と好意的に言って頂けます。

若き歯科医や学生さんと話をするたびに、将来に夢を持てるような、そんな歯科界にするにはどうすれば良いのか?と考えてしまいます。

目先のビジネス的発想で拡大し、”医療の中身が問われないままの大規模歯科医院が成功事例で勝ち組!”と称される今の風潮は本当に残念というか、怖いことです。この世相が続く限り歯科医、いや歯科業界の社会的地位の向上は望めない、と感じるのは、常識ある歯科医の定説となっています。

批判的な内容に終始した感があり、読んでいて不愉快に思われた方も多いかと思います。本当に申し訳ありません。あくまで1歯科医が感じたことを、現在の一般的な歯科業界の流れに照らし合わせて述べただけです。現状を嘆いてもなにも変わらないし、マイナス思考は負の連鎖を呼んでしまいます。

微力ですが、自身あるいは同志とともにできることを、日々積み重ねていきたい、と思っています。
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