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第90回 ”矯正治療”への思い

今、品川駅近くのおしゃれなカフェ(New York cafe)で、一人モーニングブレイクしている。

最近東京に来ると思うことだが、どこの町にも活気がある。いやあり過ぎる気がする。ある意味バブル真っ只中と感じるのは私だけであろうか?高層ビルが所狭しと建築中で、ここ品川も数年前とは全く様相が一変した。地方までこの波は押し寄せてくるのであろうか?

ところで、私はというと、GW後半の3日間、ほとんど缶詰め状態、毎日夜12時近くまで、正直少しダウン気味であるが、自身のステップアップには必要と思い、知人の勧めもあって急遽このセミナーの参加を決めた。講師陣は、日本を代表する「総合歯科治療」を実践しているスペシャリストの面々である。デジタル機器を駆使した矯正診断法に始まり、多分野(外科、歯周、補綴・・・)との高度なコンビネーション治療を、定量的に数値化、評価した上でプラニングし、治療法を決定する、まさに理詰め的手法である。300ページを超えるテキスト、凡人の私に果たしてインプットされているのだろうか?


さて、タイトルの話をちょこっとしましょう。

スタッフ2人から、矯正治療を始めたいとの申し出があった。歯科医院に勤務し始めると、だれしも口の中への関心が高くなっていくものである。自身の歯並びに問題があれば、“矯正治療したほうがいいのかな?”からやがて“矯正治療をしたい、しなければ!!!”になるのは、当然の感情である。患者さんサイドに立てば、“歯並びがガタガタのスタッフに口腔衛生指導されても説得力ないよなー”と内心思う方もいるはずである。

仕事へ前向きなスタッフであればあるほど、“きれいな歯並びになりたい!”と思うはずだし、私としても非常にうれしい申し出である。スタッフから治療を依頼されるということ、しかも、ある程度期間のかかる治療を任せてもらえることは、信頼関係があってのことだと思う。俄然頑張らなければ!と強く思う瞬間である。


今までに、既に10人以上のスタッフの矯正治療を手がけてきた。装置を除去した時の感想を聞くと、皆一様に、“治療中大変なこともあったけど、治療してよかった!口元のコンプレックスがなくなって思いっきり笑える!先生ありがとう!と言ってくれる。歯医者冥利につきるとはこの時をいうのであろう。

実は、治療半ばで中断した一人のスタッフがいる。今思うと、本当に残念というかつらい思い出である。本人の気持ちを察すると、今でも、懺悔の気持ちで一杯である。いろいろな経緯があってのことだが、結果的に不本意な形になってしまって、申し訳ない気持ちを、今もずっとずっと思い続けている・・・。これからもずっと反省の日々です・・・・。


矯正治療は、私のライフワークの一つである。開業すると同時期(13年前)から、ありとあらゆるセミナーに参加した。著明な矯正歯科医のセミナーには、納得いくまでとことん何度でも受講した。“やるからにはこだわりたい、突き詰めたい、開業医でできる最高の矯正治療を目指したい!”という思いがあった。4年くらいかけて、ブラケットケースを100症例くらいしたころであろうか。一通りのパターンをこなすと、かなり自信というか、それなりの仕上がりにはできるようになったものの、だれの目にも難症例と呼ばれるケースへの取り組み法への選択肢の少なさや、自身の治療法のバリエーションの少なさに気づき始めた。

 “患者ニーズ”が多様化している現在、私が考える「良いホームドクター」とは、患者さんが望むゴール、治療法をいかに提案できるか?ではないか、と思っている。そうなると、単科での治療法の提案では不可能なケースがほとんどである。

矯正治療を例に挙げれば、「重度の出っ歯」の方が来院されて、“見えない装置で半年以内に終わるようにしてほしい!”と言われたとします。10人中何人の矯正医が治療法を提案できるでしょうか?たぶん1人いるかいないかだと思います。一般開業医は、総合的治療を掲げているのですから、引き出しを多くもつこと、もちろん質を落とさずに!という前提があってのことですが・・・。

「多分野のコンビネーション治療こそが、患者ニーズに答える最大のポイント!」なわけです。そして、もう一つ大事な点は、”診断、治療プラニングまでは、一人のドクターが行うこと”です。なぜなら、ある分野に偏ったプラニングにならないようにするためです。実際の治療は、物理的な問題もありますので、診断医が指導、管理下にいれば可能です。

基本に忠実に、そして各々の専門分野の質を向上し統合した診断法を身につけることが、今年の私の課題です。桶に例えるならば、一枚一枚の立て板の高さと幅をできるだけ大きくすることだと思います。また、簡素化(simple)にすることは大事であるが、簡略(skip)化することは手抜き(scamp)につながるので注意しなければいけないとも思っています。

これからの時代、漠然とした一般臨床医ではなく、各科目の質の向上をバランスよく行っている歯科医が患者本位の治療を提供できる歯科医であり、「総合歯科医」と呼べるのです。

口の達者なほら吹き歯医者になることよりも、患者さんから「感動と感謝と尊厳が与えられる歯科医師」になりたい!!!と強く思う今日この頃です。

最後は、また硬い話になってしまいました。すいません。
それでは、セミナーが始まりますのでここらへんで・・・・。