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第59回 アメリカ研修の余波

最初にソフトな話をチラッとします。

5日間滞在したラスベガスの印象ですが、アメリカの底知れぬエネルギーというか、アメリカが良しにつけ悪しきにつけ大国と言われる所以(ゆえん)を肌で感じました。年間3500万人以上の観光客を満足させるべく、街全体がテーマパークのようでした。

ホテル自体がテーマ性を持っていて、各ホテル内で行われているアトラクションやショーの規模、完成度が凄かったです。3000~5000室もある巨大なホテルが20棟以上立ち並んでいる景観を見ていると、街全体が巨大な遊園地のような錯覚になりました。
その中でも、”O(オー)”と呼ばれている水をテーマにしたアクロバティックなショーは、世界最高峰のパフォマンス集団だそうで、観光で行った折には、是非観覧したいと思いました。

無料で観れるアトラクションも数多くあり、その一つが左の写真の海賊船バトルショーです。夜遅くまで定時に行われていたので、一度だけ見れる機会がありました。

”砂漠の真ん中に作った巨大な要塞”は、私には、”大国アメリカのシンボル”として映りました。
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では、本題の話をします。

興奮冷めやらぬアメリカ研修から帰国して10日が過ぎました。帰国直後から、友人、知人、そして面識のない匿名の同業者の方からも、研修施設や研修内容の詳細を教えて欲しい、という問い合わせが何十件と寄せられています。私が研修に行ってきた施設のことは、インプラント治療をルーティーンとして行っている歯科医なら名前くらいは聞いたことがあるはずです。ただ、いかんせん日本からは遠いため、Dr.chenのコースを受講したくてもなかなか踏み切れないのではないでしょうか?
今回、通常は5日間で行われるコースを3日間に凝縮して、スペシャルなアドバンスコース(HSC、VTT、ICMなど)を行うという情報を聞いて、日程的に少し無理をしてでも参加すべきと判断し、渡米しました。

Telやメールでのいろいろなご質問に個別に対応していると大変なので、受講した研修の概要と成果について、少し掘り下げてお話したいと思います。
一般の方にはわかりにくい内容ですが、お許し下さい。

Dr.chenがAOICOIでメインスピーカー、メインシンポジストを何度も務めていることから、世界的に注目されているインプラントロジストであることは、ご存知の通りですし、皆周知の事実です。現在では、世界的に最も有名なインプラントロジストの一人といえます。9年前に彼が考案したHSCは、最初誰にも相手にされなかったそうです。今では、世界中から彼のテクニックを学ぶために押し寄せているという実情があります。

最初私も半信半疑でした。しかし、4回のオペ見、及び何回ものハンズオン実習で確信しました。オステオトームやラテラルウィンドーテクニックはもうする必要がありません。数年後には過去の遺物となるでしょう。閉塞感のある歯科医療の中で、再生療法の分野だけは目まぐるしく変化、進化しています。3年前のやり方は通用しない時代です。

彼の考案したバー類とコンデンサー、そして補填剤やボーン・ミクスチャーの使用法で行えば、誰でも確実にリフティングができます。10㎜いや15㎜の挙上も全く問題なしです。非常にシンプルな術式です。セプタム(中隔)を狙った埋入も可能です。ウォッシャースクリューやマウント付きフィクスチャーなどのアイテムを上手く利用する方法や、どのような症例にどのメーカーのインプラントが適しているかなど、2000症例、4000本以上ものHSCによるサイナスへのアプローチを行ったノウハウは、非常に説得力があるものでした。

また、通常即時埋入の禁忌とされている”フローター”ケースへの対処法や、スレッド露出の場合の表面性状の違いによるリペア法など、多種多様の偶発症への対応を何パターンも教示してくれました。

興味のあるドクターは、一週間休診?にしてでも、是非彼のコースに参加してほしいものです。彼が最初に世界的に脚光を浴びたVTTのコースも素晴らしいです。必ずや、ワンランク上のインプラント治療が身に付きます。そして、何より患者さんに優しい治療が提供できるようになります。上顎のインプラント治療は怖いものなしになります。

話が変わりますが、どうして彼の下に多くの患者さんが集まってくるのか、と言えば、歯科医としての技術力もさることながら、マネージメント力の凄さにあります。といっても、実は私は経営のノウハウについて人に語れるほどの知識は全くありません。
ですから、彼や彼を取り巻くスタッフの話をご紹介します。

アメリカで、専門医によるインプラント1本の埋入処置の費用の相場は日本円で約40万だそうです。彼のオペ費用はもう少し高いみたいにスタッフの方は言っていました。一日5~10人のオペをします。夫婦で年間3000本、売り上げは、単純計算で12億です。2人のドクターで年間12億円も稼ぎます。歯科医の友人がメールで、”1日に10人もオペができるはずはない”と聞かれました。私は、”Dr.chenのオペを見れば納得するよ”とだけ答えました。

そして、何より興味深かかったのは、患者さんと会話しながらオペが進行する点です。テクニック、使用する器具類が単純化、システム化されていますので、オペ中に歯科医自身に余裕ができます。患者さんと雑談することもしばしばありました。しんどいそして堅苦しい日本人に浸透している特殊な治療というイメージとは程遠い風景でした。
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ご存知のように、米国では、日本とは比較にならないほどコミュニケションが重要視されています。治療中に患者さんがどんどん話かけてきます。”どこまで進んだの?今何本埋めたの?あとどれくらいで終わる?”などです。まだまだ日本人は”おまかせ治療”的な風潮がありますが、米国人は違います。自己主張を必ずします。”今日オペしてくれないのなら他の歯医者に行きます”といった具合です。10件近いセコンドオピニオンの末にやっと治療する方もざらです。ですから、他の専門医との差別化の意味でも、迅速に、患者さの要望を優先した優しい治療を提供しないと、生き残っていけません。経営的に成り立たないのです。患者側からすれば、”こんなに高額の治療費を払うのだから、私の言うとおりにするのは当然よ”と言った感じなわけです。

効率重視の診療をすると、治療の質が落ちるのではないか?と普通考えてしまいます。ところが、アメリカでは専門医に対する同業者の目は非常に厳しいです。同業の歯科医の失敗を探しては、訴訟を起こし、慰謝料を取ることを専門にしている歯科医もいるくらいです。専門医たるもの治療の失敗は許されません。必ず自身の身に降りかかってきます。ですから、彼が単なる自己流、自己満足で2万本もの埋入を行ったのなら、とっくに歯科医のライセンスは剥奪されているはずです。

アメリカは日本のような広告の規制がないため、メディアを最大限利用するそうです。テレビにもよく出るそうです。そして、ハード面については、ユニットはもちろんのこと贅沢で洗練されたコンサルテションルーム、説明用ツールの豊富さが、質、量ともに半端じゃありません。自身の実績も最大限アピールし、紹介してもらうためのあらゆるルートのコネクションをお持ちのようでした。

ここからは、蛇足の話をします。”私の一番の趣味は仕事です”とDr.chanは言っていました。私の友人(歯科医)にもいますが、仕事が趣味だ!と言う人は結構います。大抵の場合、仕事が忙しすぎて、自分の好きなことをする時間がない場合に使うフレーズです。私もその傾向があります。

ところが、皆がよく言う”仕事が趣味”というのと、彼が言う”趣味が仕事”というのでは、かなり意味合いが違います。趣味だから、嫌になったらいつでも止めれるというのです。仕事なら、簡単には辞めれません。明日止めても全く困らないそうです。なぜなら、第二の趣味である不動産で歯科医としての稼ぎの約30倍の収入があるそうです。世界中に不動産を70箇所持っているそうです。”開いた口がふさがらない”とは、こういう時にうってつけのフレーズです。スケールの大きさが違いすぎます。

まあ、とにもかくにも刺激の多い研修でした。合理主義の国ならではの一面を多く垣間見れました。
新しい風、新鮮な空気が体に入ってきた感じです。当医院が進むべき方向性が見えてきた渡米でした。