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第54回 My life・・・ My goal・・・

今回は画像なしです。最近思っていること、感じていることを、徒然風に書き綴ってみました。

2005年もあとわずかとなりました。いろいろなことが重なり、このところ非常にばたばたとした超過密な診察を行っていました。
毎日が戦場のような忙しさで、私たちスタッフにゆとりや余裕のかけらもない姿を、患者さんが感じ取っていることを、もちろん私は気づいています。予約以外での来院の方は基本的にお断りしている状況がずっと続いています。打開策を模索してはいるのですが、結局のところ完全予約制も検討中です。

今年予定していたハード面の大きな改革を、諸事情により来年にずらさざるを得なかったことが一番影響しています。ただ、この1年でソフト面、特に私を含めたスタッフのスキルアップは確実に行えましたので、来年の当医院の動向に注目して頂ければ、と思っています。

話はかわりますが、開業医というのは、良しにつけ、悪しきにつけ、「裸の王様」になってしまいがちである。
悪い面の例でいえば、自己流の治療に終始し、時間とともに、古い手法になってしまっていることに気づかないでいる場合がある。
批判、批評してくれる友人、先輩がいれば幸いだが、横のつながりが薄く、同業者への助言をすることもされることも、苦手の人が多いのが現実である。

幸い私の場合、自身の治療について苦言を呈してくれる友人や先輩(歯科医)が何人かいる。表立って批判してくれる言葉に、一瞬”ムッ”とする時もあるが、後で思い返すと、感謝の念で一杯と気づく。

私を批判する歯科医は、なぜか専門医ばかりである。口腔外科専門医、歯周病専門医、矯正専門医・・・・・。
一般歯科の開業医である私は、実は、”専門医”というフレーズは、あまり好きではない。

なぜなら、一般歯科として開業したからには、オールラウンドにあらゆる分野に精通した歯科医を目指すのが本道だと考えるからである。専門の分野に特化したことをしたいのなら、大学に残って研究をすればいいと思うし、医療というアナログを扱う分野を細分化しすぎると、偏った治療法への誘導や弊害の方が目立ってくる、と思うからです。

私は5年余り在籍していましたが、大学病院は専門医の集団の最たる場所であり、完全に分業化されています。ところが横のつながりが十分とは言えず、表向きはチーム医療を掲げていますが、現実には、医局内、医局間でのいろいろなしがらみがあり、横の連携が非常に希薄というのが実態です。人の出入りも毎年のように行われ、数年後に再来院した時には担当医は既に退職しており、以前の詳しい治療経過がわからない場合もよくあることです。

私は、入院設備等がないため処置できない、といったハード面の物理的な問題から開業医ではできない事例を除いて、”全て受け入れ得る体制が整っていることが、患者さんのために一番なる”、と常に考えています。

例えば、歯周病の治療には、口腔外科の知識が必要ですし、補綴治療の際には、矯正や外科、歯周の知識が当然必要です。
一般歯科に精通した歯科医が、他の分野でも質の高い治療ができることが、”本当のスーパーデンティスト(歯科全般に対しての専門医)”と考えます。

ですから、Aという患者さんの治療をもし行おうとした時に、知識、スキルのある歯科医ほど治療方針が何通りも考えれるはずです。治療方針のバリエーションを多く提示し、個々の方法の長所、短所を平等に説明できるかどうかは、自身がどの治療法でも行えて始めて可能なのです。
 自身が行えない治療法については、”否定的に話すか、全く話をしないか、専門医を紹介します、といって、丸投げしてしまう治療放棄の状態を自らつくる”の3通りのいずれかを無意識に行うしかないのです。

自分の力量を知った上で、たくさんの治療法の中から最善の方法を患者さんとともに模索することが一般開業医の魅力ですし、診断力が試されるという意味では、医療人である歯科医としての一番の腕の見せ所、と思うのです。

診断力を養い、治療法の良否を追求するためには、あらゆる分野のいろいろな治療法を貪欲に学ぶ姿勢と、そこから得た知識を下に実践し、経験値を上げていくことが必要と考えています。

先日、上顎左側後方部の歯牙が4本欠損されている方が来られました。前医にてインプラントのオペに失敗したので、別の治療法はないのか?というセコンド・オピニオンを求めての来院でした。話を聞いていると、上顎洞まで、2~3㎜しかないケースにも関わらず、CTによる診断をせず、骨補填剤も使用しなかったとのことで、術後重度の上顎洞炎になり、1ヶ月入院したとのこと。そして1年経った今でも、臭覚がほとんどないとのことでした。患者さんが話してくれた内容がもし事実であれば、コメントのしようがないほど無謀な処置といえます。

レントゲンを診る限り、再インプラントも可能と思われましたが、患者さんのインプラント治療への恐怖心、さらには全ての歯科医への不信感は極限に達していました。”さぞかし大変だったことでしょうー”と聞き役に徹するしかありませんでした。その後、欠損部の治療法としては、義歯(入れ歯)になりますが?、とお話しました。患者さんの要望を集約すると、次の2点でした。

①右側しか咬めないので左側で咬めるようにして欲しい
②審美的な義歯にしてほしい。


機能(咬む)と審美というのは、治療をする上では、相反する側面を持っている場面によく直面します。審美的な義歯というのはなかなか設計上難しくなります。
アタッチメント類を使うか、最近ブームのホワイトクラスプや軟性材料を使用した機能的には満足しえない義歯になってしまいます。結局アセタルレジンという白いバネを使用した義歯を作製しましたが、咀嚼能率は天然歯の半分以下に落ちてしまいました。歯科医側が考える理想的な治療とは程遠い結果になりました。患者さん自身も心から望んだ治療ではなかったのは、顔の表情、言葉からにじみ出ていました。

関東地方から来院されていた別の患者さんは、奥歯の詰め物に対して、異常な程のこだわりを持っていました。セラミックではなく、絶対磨耗しない破折しない金属(金合金)を希望されていたのですが、使用する金属の成分について、細かく尋ねられました。一般的には硬すぎず軟らかすぎない20K(カラット)の金合金を使用するのですが、金以外の成分は何がどれくらい含まれているのか聞かれました。また、20Kでは咬みごごちが柔らかすぎるので、金の含有量を2%単位で何種類か変えて作ってほしいとのことでした。金属の硬さを咬みごこちで判断することなどできないはずです。さらに、溝の形(隆線、副隆線、結節の形状、数、溝の位置、深さ)なども細かく指示されました。

とても根気のいる作業になりました。診療室で、金属に置き換える前のワックスの状態で何度も目の前で私がカービング(彫刻)しました。患者さんの要望を最大限活かしながら、機能(咬む)を阻害しない形態にしなければならないので、非常に苦労しました。
”泊りがけで何度も足を運んで下さる理由は?”と尋ねたところ、”きちんとした技工のできる歯科医に、納得いく治療をしてもらいたいから”という返答でした。

精神医学の用語に、
「身体化」というのがあります。検査では異常は見当たらない身体症状または訴えのことを言います。ほとんど全ての精神疾患で起こりうるそうです。診断の結果、「非歯原性歯痛」に該当する方も最近非常に増えました。全人的な広い視野で診る必要があります。

1人のドクターによる柔軟な多角的な視野と、多分野の専門知識がないと診断がつかない難症例に頻繁に遭遇します。
本来、診断と治療計画の立案までが歯科医の一番重要な仕事であるべきなのが、歯の削り方や外科処置の手際良さなど手先の器用さばかりがクローズアップされるのは残念でなりません。

正確な診断とそれを下に立案できる治療計画のバリエーションをできるだけ多く提示できるよう、来年もスタッフ共々研鑽していきたいと思います。
また、キュアとケアのバランスをとりつつ、医療の質の充実という本道からぶれないよう努めていきたいと思っています。