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第41回 ”かみ合わせ”治療への取り組み!(顎関節の話)

今回は、前回に引き続き、”かみ合わせ”の話をしてみたいと、思います。
”かみ合わせ”というと、上下の歯のかみ合わせの良し悪しを想像されると思いますが、実は、歯のかみ合わせについて語る前に、避けて通れない
”顎の関節”の話をさせていただきます。
 私たち歯科医がかみ合わせが悪いと診断を下す場合、顎関節部に異常がある場合と、上下の歯のかみ合わせに異常がある場合、その両者に問題がある場合の大きく3つのパターンに大別します。どこに異常があるかによって、治療方針は当然変わってきます。
 
顎関節の構造正常な顎運動とは?そして異常な構造や顎運動に至った場合の現象等について、一般の方に少しでもご理解頂ければと思っています。
 異常な顎運動が行われている場合の客観的な評価法、当医院で行っている計測法、そして実際の治療にどのようにいかしているか、については、次回お話したいと、思います。


図Aは、右側面から見た頭骨の模型です。青丸が耳の穴外耳孔という)で、黄色丸の部分顎関節部になります。外耳孔の約1㎝前方に顎関節があります。
 
図Bの黄色丸は、顎関節部を拡大したところです。頭蓋側の凹み関節窩という)に下顎の凸部分下顎頭という)が軟らかい軟骨関節円盤という)を介在してはまり込んでいます。図C青ラインの部分が関節円盤で、黄色点線部分が関節窩ピンク色の部分が下顎頭で、口を開閉時には、、この部分を中心に回転運動します。
 但し、人体の他の関節部分には見られない顎関節の最大の特徴として、大開口時
図D)には、下顎頭を含めた下顎自体が前方へ動きます。前方へ動かないと、大きく口が開かない構造になっています。
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図Eが大開口時の下顎頭の位置を示しています。青の点線部から青の実線へ移動しなければなりません。下顎頭が前方へ出る時に、頭蓋側のピンクの部分(関節結節という)の出っ張りを乗り越えなければいけません。この部分を乗り越えられない、あるいは、乗り越えにくい方は口が開きにくい、という症状を訴えられます。
 クッション、あるいは、潤滑油の役割を果たしているはずの
関節円盤の変形や損傷があると、正常な顎運動が行えません。
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レントゲン写真で診てみますと、図Fが口を開けた時で、図Gが口を閉じた時の正常な方の像になります。
 
図H、Iは、下顎頭と関節窩及び関節結節をトレースしてみました。図Hが開口時、図Iが閉口時です。通常下顎頭は、成長が完了する20歳前後には、半円形の形状をしているのが理想ですが、夜間の歯軋りや不適切な上下歯牙の咬合関係などが原因で持続的な圧迫を受けると、変形や位置異常を起こします。当然仲介役である関節円盤も損傷を受けている場合がほとんどです。
 関節円盤の変形や穿孔の疑いがある場合は、CTやMRIで顎関節のどの部分にどの程度の損傷があるかを把握して、治療計画を立てる必要があります。
 また、顎関節のもう一つの特異性の部分である左右がバランスよくほぼ同じ動きをしなければならない、という点があります。
下顎骨は、左右別々ではなく一つですので、左右の顎運動は同時に起きます。左右どちらかの動きが悪いと、反対側にも影響がでます。
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           F            G
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        H               I
図Jの患者さんは、真っ直ぐ口を開けようとしても、顔貌の正中(青線)に対して、左側(向かって右側になる)へ偏位してしまいます。模型で表現すれば、図Kのような感じです。この場合、患側は左側になります。左側(向かって右側になります)の下顎頭が前方へ出れないので、しかたなく十分動ける右側の下顎頭が過度に前方(正確には、前下内方)へ代償として動いています。
 そのため、健常側であるはずの右側の顎関節部分にもかなり負担がかかってしまいます。左右のアンバランスな顎運動は、顎関節部周囲に付着している筋肉や、首や肩の症状に波及することもしばしばあります。
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図Lの患者さんの顎関節部のレントゲン像が図M、Nになります。図Mが右側の開口時、図Nが左側の開口時の像です。患側である右側図M)は、関節結節(図Eのピンク丸の凸部分に相当)を下顎頭が乗り越えられず、頂上付近までしか動いていません。
 一方健常側である左側(
図N)は、下顎頭が関節結節を乗り越えて前下方へ移動しています。ですから、顔貌が、右側へ偏位しています(図L)。
 もう1点重要なことは、下顎頭の形態的な変化です。
図O図Pのトレースした下顎頭の形態(青線)が随分違うのがお分かりだと思います。
 同じ患者さんの左右ですから、ほぼ同じ形態をしているのが理想です。
下顎頭は、本来丸い曲線(図P)のほうが、関節円盤を介して自由に前後左右に運動できます。右側(図O)のように角があると、動くj方向に制約を受けます。図Oの下顎頭は、磨り減ったり、部分的に圧迫を受けたことにより、表面の骨が吸収してゴツゴツした形態になっています。
 左右の下顎頭の形態が明らかに違う場合は、顎運動に何らかの障害が発症しているケースがほとんどです。
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視診による顔貌や顎運動時の顎の動きの評価や、レントゲンで顎関節部に異常が診られる場合の像についてのお話しました。
 では、実際に、顎が開閉口や前後左右に動いた時の正常・異常とはどんな動きをするのか、3次元的に捉えておく必要があります。
 そのための機器を、
「下顎運動記録装置」といいます。咬合の診査には必要不可欠と考えています。
 当医院で行われている咬合診査、各種検査について次回ではお話しようと思っています。