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今回は、歯科医院での歯の治療の際、ほとんどの方が経験したことのある”仮歯”の話をしてみたいと思います。
”あまり難しい話をしないでほしい”、という要望が最近多いので、問い合わせがあった内容をヒントに平易な話に終始しますので、歯科関係者の方には、ものたりない内容ですが、お許しください。

先日、当医院へ来院された方に、”先生のところでは、奥歯なのに仮歯をいれてくれるんですねー。必要なんですか?”という質問がでました。
”仮歯”のことを歯科用語では、”プロビショナル・クラウン”といいます。前歯については、審美的な問題がありますので、治療中、仮歯を作製、装着するのは当然ですが、奥歯についても、仮歯は、重要な役目がありますし、いろいろな情報を提供してくれますので、治療を行う上では、必要不可欠といえます。


今回は、奥歯の事例で話を進めてみたいと思います。

図Aの患者さんは、金色の被せとその前(画面では左側)の白い被せの間に食べ物が挟まる食片圧入を主訴に来院されました。図Bの黄色丸の部分です。
この2本の被せは、10年以上前に治療したとのことでした。

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レントゲンを撮ると、図Cの状態でした。レントゲン写真の見方の詳細については、院長からのメッセージの第25回 <レントゲン写真を知ろう!>・・・① をご覧ください。

図Dの黄色丸のところに、食片圧入があって困るとのことでした。食片圧入の原因は、図Eの青のラインをご覧ください。被せと歯根の移行部のところに、階段状のステップができています。

不適合な被せということになります。
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図Fは、金歯と白い被せを除去してほぼ同じ形態の2本の仮歯を装着したところ、やはり食べ物が挟まって来院されたところです。

図Gの黄色丸と図Hの緑丸の部分の歯と歯の隙間の形態が違うのがお分かりいただけると思います。図Hの形態にすると、食べ物が挟まりませんでした。

図I図Jは裏側から見たところです。図Jの形態にすると、食片圧入は生じませんでした。

歯と歯の接触する部分の形態や強さは非常に重要で、図G図Iのように点で接触していると、食片圧入しやすいです。もちろん、図Eのように被せと歯根の境界に段差ができるのは問題外で、できないように作製する必要があります。
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図Kが最終補綴物です。仮歯を作製、装着し、問題が生じないことを確認して、同じ形態の最終的な被せを作製すれば、まず満足のいく結果が得られます。

奥歯に仮歯を作製する理由はいくつも考えられます。
支台歯(被せを装着する土台となる歯)を、その位置に保つ、最終補綴物の形態の指標にする、審美的な配慮、治療中の咬合の確保、等です。
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仮歯の修正、装着を、問題を解決しながら繰り返すことにより、生体機能に適合した被せの 形態に近づけることができます。装着している仮歯を最終補綴物と見立てて、 ホームケアのコントロールが可能か咬合や歯周組織への 問題が生じないかなども十分に診ることができます。

 また、多数歯を同時に治療する場合ほど、仮歯の重要性は増します。 
舌や頬を含めた顎運動に調和するか否かは、患者さん自身にしかわからない 繊細な部分でもあります。

 私自身、患者さんには”仮歯”という言葉を使っていますが、”仮歯”という言葉がどうも誤解を招いているような気がします。たくさんの情報を提供して くれ、治療上必要だから作製しているのですから、主役ではないにしろ、十分脇役には徹していると常々思っています。脇役あっての主役(最終補綴物)です。

 もし、治療中に仮歯を装着した場合には、仮歯の装着感や不具合等に関して、十分担当医に伝えてください。 そうすることが、より良い最終補綴物作製に反映されることは間違いありません。