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第19回 保険治療の限界

昨日、近くの病院に入院されている方から、往診の依頼がありました。
”入れ歯が合わないので、上下作ってほしい。往診に来てもらったら、治療費はいくらくらいかかるのですか?”という問い合わせでした。

健康保険での治療の場合、”往診ですと、負担が1割の方で、毎回の訪問診療料(約1000円)と、処置料が外来(診療室での治療)に比べ1.5倍ですので、4~5回行かせて頂くと、約2万円弱かかります”と返答しました。

すると、そんなにかかるんですか?5000円くらいになりませんか?2万円は今の私には無理です、と言われました。しかたないので、入れ歯の再製が望ましいのですが、修理という形で対応し、予算内で治療しました。

確かに、上下の入れ歯を外来で作製すれば、治療費は、1万円はかかりません。
しかし、2万円が高いか安いかは、人それぞれの価値観の問題だと思います。
健康保険の点数、治療費は、私が決めたわけではありません。”お上”が決めた全国一律のルールで行われています。
正直言って、最善の治療とは呼べないところだらけです。使用できる材料も決まっています。良い材料を使い、手間を惜しまず最高と思われる治療を健康保険で提供し続ければ、どこの歯科医院も必ず倒産してしまいます。

また、歯科医の技術的な評価は、誰が入れ歯を作製しても全く一緒です。入れ歯に精通した歯科医と、大学を出たばかりの新米の歯科医が作った入れ歯の治療費が全く同じです。医療に対して価格が最初から決まっているのです。医療の本質からいえば、非常に矛盾しています。 はっきり言って、質の高い理想的な治療は不可能なのが現状です。

最近は、年齢を問わず、見た目(審美面)、機能面(よく咬めるかどうか?)双方への要求の高い方がとても多いです。健康保険でどうしてできないのか?と不満を訴えられる方がいます。でも実情では限界があります。

”国民皆保険”の名の下に、医師の裁量権(プロフェッショナル・フリーダム)が認められていない悲しい日本の実情があります。
日々スキルを磨いて頑張っている歯科医による価値のある治療に対しては、高い技術料を取る!
個人的にはこの考え方に賛成です。

近い将来、医師の裁量権が認められる日がくることを願っていますが、保険行政が行き詰っていることを考えると、まず有り得ない、と思うのは、私だけではないでしょう・・・・・と愚痴になってしまいました。

当医院、そして私自身が治療選択肢をできるだけ多く与えられる医院でありたいと思っています。
いろいろな治療法の正確な情報を伝えることが、治療の出発点だと考えています。