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歯が欠損した時の第一選択はインプラントなのか

私の担当のページが、最近更新されていないとのご指摘を頂いた。本当に申し訳ありません。新年度が始まり、気が付けば4月も終わろうとしている。日々の診療とは別の仕事が多くあり、多忙を極めていました。学会発表のスライド作成、学会誌や学術誌への依頼論文や投稿論文の作成、当クリニック主催のセミナーやスタディグループでの発表スライド作り、複雑な問題を抱えた複数の患者さんの治療計画書の作成等、毎日がアッという間に過ぎ去っていく感じでした。そして、現在進行中の臨床研究のデータ収集と分析・検証に最も多くの時間を費やしています。

 

それはさておき、標記の件について私見を述べさせて頂きます。テキストのみになることはご了承ください。インプラント治療に関するトラブルやセカンドオピニオンを求めて来院する方が後を絶たないです。本当に多いんです。

現在、インプラント治療を傍標している歯科医院は全歯科医院の1/3という厚労省のデータがある。“インプラントだと自分の歯のように何でも咬めて隣の歯を削ったり負担をかけたりしないので、歯を失った場合の最も良い治療法です”といった宣伝文句を良く目にする。が、本当に、“インプラントは欠損した場合の第一選択の治療法なのか???” 

インプラント治療に関して疑問や不安を持って来院される方の質問には以下のようなものがある

1)本当に抜歯してインプラントが最良の治療法なのか?

2)本当に抜歯する以外方法がないのか?

3)インプラント以外の方法(例:入れ歯)は駄目な治療法なのか?

4)高額な治療費がかかるが、長く良い状態が維持できるのか?

5)永久保証や長期保証を謳っている医院があるが、半永久的な治療法なのか?

6)満足のいくインプラント治療がされていない

7)インプラントを強く勧められるが、歯科医の技術に不安がある

8)歯科医の技術を見極める方法はないのか?

 

上記1)~8)についての私見を述べる前に強調しておきたいのは、歯が欠損した場合の最も優れた治療法はインプラントという発想・考え方は適切ではない!ということ。何より生体は日々刻々と変化していて、生活習慣は下より、全身状態の変化や加齢・老化を緩やかにすることはできても食い止めることはできないので、免疫力は低下していく。

仮に同じ術者が同じ治療法を行ったとしても、一人一人生体の反応はさまざまで、長期的に異なった経過を辿る。インプラントが歯を失った時の第一選択と言い切ることなんかありえない!

 上記項目の1)、2)については、歯を保存して行える治療法をどこまで真剣に考え提案しているか?その歯科医の力量(知識・技術・経験)によるところが大きいと思う。少しでも疑問を感じたら、セカンドオピニオン(別の歯科医の意見を聞く)が得策です。

3)については、偏在した知識を前提の治療提案になっている可能性が高い。歯が欠損した場合の治療法は、大きく分けてインプラント、ブリッジ、義歯(入れ歯)の3つである。特に入れ歯への誤解が蔓延していると感じる。入れ歯を真剣に学習した歯科医が少ないことは悲しいことで、適切な手順で作製した入れ歯は十分に咀嚼機能(咬む能力)を長期に渡って発揮する場合が多い。一概には言えないが、入れ歯の学習をほとんどしていない歯科医程インプラントを勧める傾向にあると感じる。

4)、5)については前述したように、メインテナンスの大切さは前提であるが、変わりゆく生体に対してある意味異物であるインプラントに問題が起きる可能性は限りなく高いと言える。インプラント治療のメリットを強調しすぎることはあってはならない。そして、天然歯の歯周炎に相当するインプラント周囲炎に罹患した場合の治療法が確立されていない現状は、今後大きな問題となるであろう。インプラント治療の予後を左右するリスクファクター(危険因子)についての十分な説明や全身状態の悪化が影響を受けるといった不確定因子についても同意して頂いておくことが求められる。

6)~8)については、インプラント治療の難易度で、結果の良否や達成度も変わってくるので一概には言えないが、経験豊富なインプラント専門医に相談あるいは施術してもらうことが肝要と思われる。日本最大のインプラント系学会である「日本口腔インプラント学会」の専門医を取得している歯科医は、知識・技術という点では一定の基準をクリアしているので一つの目安になるかと思います。

 

まとめますと、インプラント治療の最大の問題点は、治療後に長期的に良い状態を維持するのがとても困難な場合が多々あることです。良好に経過するか否かの多くは、生体側の適応力・抵抗力・免疫力などに依存するので、治療前にインプラント治療の適応か?の見極めが大切になってきます。

インプラント治療のメリットばかりを強調し、他の治療法は良くないという風なカウンセリングが行われる場合は、遍在した考え方ですので、別の歯科医の意見を聞いて熟慮してから決定すべきです。